「レッドブル」誕生から35年、巨大化で「モンスター」に挑む ただしブームは収束の兆し

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 1987年にオーストリアで販売が始まった「Red Bull(レッドブル)」は、今年4月で誕生35年を迎える。2005年に日本上陸を果たすと、たちまちエナジードリンク旋風を巻き起こし、現在では類似商品が続々と登場している。今年初めには“1.9倍”のビッグサイズも発売されたが、識者は「市場の盛り上がりはひと段落した」と指摘する。

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 今年1月18日、コンビニやネットサイトに向けに「レッドブル・エナジードリンク」(以下レッドブル)の473ml(316円、税別)が発売された。スタンダードサイズの250ml、355mlに、新たな大容量サイズが加わった形だ。

 レッドブルは、昨年2月に値下げを行ってもいる。250mlは241円から190円に、355mlは292円から245円となり、およそ50円と大幅なプライスダウンだ。背景には、ライバル商品の存在がある。

 その筆頭格が2012年からアサヒ飲料が発売する「モンスターエナジー」(以下、モンスター)。値下げ前のレッドブルが355mlで292円だったのに対し、こちらは同じ355mlで190円と、安い。モンスターの追い上げはすさまじく、発売から5年の17年にはレッドブルの出荷数量750万ケースに対し、730万ケースと迫った(いずれも「飲料総研」推計値、以下同)。そして18年に、レッドブル800万ケースにモンスター940万ケースと、逆転したのである。

「モンスター首位」は変わらないが、市場は“踊り場”に…

 昨年2021年は、レッドブルが880万ケース、モンスターが1490万ケースだった。モンスターが市場の首位に君臨する構図には変わりないものの、飲料総研の宮下和浩氏は、こんな“変化”を指摘する。

「2020年まで順調売り上げを伸ばしていたモンスターですが、昨年、その伸びにストップがかかりました。20-21年の伸びは0.6%増。一方、レッドブルは10%増でした。今年に入ってからも、モンスターの出荷数量は前年比マイナスとなっています。ここにレッドブル値下げの効果を見て取ることもできますが、モンスター側は私どもの取材に“レッドブルの値下げの影響はなく、新商品の投入数が減ったから”との見解を示しています」

 エナジードリンク市場には、2020年にサントリーから「ZONe(ゾーン)」という第三の刺客が現れた。出荷数量は先行する2社に及ばないものの、20-21年の出荷数量は68%増と成長著しい。

「ただし、ゾーンの出荷数量のうち、半分以上は新商品です。新フレーバーの投入で売り上げを伸ばす手法は、モンスターも同じ。その点、レッドブルはバリエーションが少なく、“基本の味”で勝負をしているので健闘しているといえます。新製品を出さないと売り上げが伸びないという状況は、エナジードリンク市場が飽和していることを意味します。市場規模としても『オロナミンC』や『リアルゴールド』といったジャンルの市場とほぼ同じとなった。ここまでくると、エナジードリンク市場の成長は“踊り場”に来たといえるでしょう」

 エナジードリンクは、モータースポーツ等のスポンサーを務めることで認知度を高め、浸透してきた背景がある。コロナ禍によってレースや試合が開催されにくくなったことが、市場停滞の要因にもなりそうだ。

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