渋谷凪咲はバラエティ界のタスマニアデビル 近藤春菜も彼女の「大喜利理論」に感心

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渋谷の大喜利、「リアルとフェイクの狭間」の妙

 そんな彼女が世間に衝撃を与えたのが、2021年11月と2022年1月の2回にわたって「100%!アピールちゃん」という番組で行われた「24時間耐久大喜利チャレンジ」という企画だった。丸一日にわたって彼女の普段の仕事ぶりや生活ぶりを追う密着ロケの中で、番組スタッフから不意に大喜利の問題が出題される。渋谷はそれに対して質の高い面白い答えをどんどん返していった。

 一日中、密着されて大喜利に答えなければいけないというのは、プロの芸人が挑むとしてもなかなか消費カロリーの多いハードな仕事である。それを若い女性アイドルが平然とこなしてしまったというのはただ事ではない。

 テレビ朝日公式YouTubeチャンネルで配信された「~凪咲と芸人~マッチング」の未公開トーク動画では、渋谷が近藤春菜を相手にして自身の大喜利のテクニックについて語っていた。

 基本的に、渋谷は大喜利の答えを考えるとき、無理にボケようとは思わずに、その問題についていったん真剣に考えてみるのだという。いかにもボケっぽいウソの答えでは人は笑わないからだ。「リアルとフェイクの狭間」こそが一番笑える。

 このときに話題に出ていたのが、「10万円の握手会、何をする?」というお題に対して、渋谷が「お尻に1回挟む」と答えたことだ。彼女はこのお題に対しても、10万円払ってもらえるような価値のあることは何だろうと自分なりに本気で考えて、この答えにたどり着いた。渋谷がそんな芸人顔負けの「大喜利理論」を語ると、春菜はただ感心するばかりだった。

 ある意味では、バラエティ番組の現場で行われていることはすべて「大喜利」であるとも言える。司会者に話を振られたときにどんなコメントを返すか。ロケ番組で地元の名物料理を食べたときに何を言うのか。瞬間的に場の空気を読み、的確なリアクションをする力がテレビタレントには求められる。芸人も一目置く「大喜利力」を持っている渋谷が、テレビの世界で引っ張りだこになっているのも当然だ。

 そんな渋谷は、外見も声も話し方もかわいらしくおっとりしていて、見る人に警戒心を抱かせない。しかし、圧倒的な大喜利力という牙を隠し持っていて、不意に鋭いコメントを返して笑いを巻き起こす。見た目はかわいいけど中身は凶暴な「バラエティ界のタスマニアデビル」として、今後も息の長い活躍を期待している。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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