「ミステリと言う勿れ」初回は史上最高の再生回数 「TVer」はどれくらい利用され、儲かっているのか

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

 6年前に始まった民放各社による番組の無料配信サービス「TVer」への注目度が高まっている。そもそもTVerはどれくらい利用されているのか。無料で儲かるのか。有料配信の動向も探った。

 TVerがニュースになることが増えた。菅田将暉(28)の主演ドラマ「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ)の初回の再生数が、TVer史上最高の約350万回を記録したのもその1つ。

 注目度が高まるTVer。一体、どれくらい利用されているのか。まず2021年10月期の再生数ベスト10を見ていただきたい(ビデオリサーチ調べ)。
(1)TBS「最愛」(計10話、計約2280万回)
(2)日本テレビ「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」(計10話、計約1726万回)
(3)TBS「婚姻届に判を捺しただけですが」(計10話、計約1708万回)
(4)日本テレビ「真犯人フラグ」(10話分、計約1615万回)
(5)フジテレビ「SUPER RICH」(計11話、計約1473万回)
(6)フジテレビ「ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~」(計11話、計約1443万回)
(7)TBS「日本沈没~希望のひと~」(計9話、計約1440万回)
(8)テレビ朝日「ドクターX~外科医・大門未知子~」(計10話、計約1410万回)
(9)フジ系・関西テレビ「アバランチ」(計10話、約1386万回)
(10)TBS「水曜日のダウンタウン」(12回分、計約1000万回)

 もちろん再生数だけで番組の真価は測れない。ドラマの場合、視聴率が低かった作品ほど再生数が高くなる傾向がある。リアルタイムで見逃した人が後から観るからだろう。

 視聴率はそう高くなかったものの、再生数が多かったドラマというと、10月期で象徴的なのは「最愛」。さて、再生数が多かったドラマと視聴率が高かったドラマは、それぞれどれくらい観られたのだろう。

下位局のプロパガンダ?

「最愛」は全10話の平均世帯視聴率が約8.7%(同個人約4.9%)。NHK放送文化研究所のリポートによると、世帯視聴率1%は7歳以上の国民約118万人に相当するから、「最愛」をリアルタイム視聴した人は全話で計約1億266万人ということになる。全話の合計再生回数は計約2280万回だ。

 一方、視聴率はトップだった「ドクターX」は全話平均の世帯視聴率が約16.3%(同個人約9.6%)なので、全10話で約1億9234万人がリアルタイムで観た計算になる。全話の再生数は計約1410万回だ。

 視聴人数も再生数も膨大になるのは1度でも観たらカウントするため。いずれにせよTVerの再生数はリアルタイム視聴に遠くおよばない。

 局側の収益も多いとは言えない。例えばTBSがTVerなどの無料配信(GYAO!、TBS FREE)から得ようとしている2022年度の収益目標は約35億円。一方、TBSテレビの2021年度の売上高は約1896億1500万円である。現時点で各局の屋台骨を支えているのは圧倒的に放送なのだ。

 TVerはPR不足なのかも知れない。総務省が発表した2020年度の調査によると、YouTubeの利用率は全世代で85.2%に達しているのに対し、TVerは14.1%しかない。どちらも無料であるのに、かなり隔たりがある。

 にもかかわらず、このところTVerの再生数ばかりが話題になるため、民放幹部の中には「視聴率下位局のプロパガンダなんじやないか」と不機嫌そうに話す人もいる。確かに視聴率のニュースは減っている。まるで再生数こそ唯一の正しい指標とするような声もある。

 実態は世帯視聴率、個人視聴率、コア視聴率(13~49歳)という番組評価の物差しに、再生数が新たに加わったということ。番組がより多角的に判断されるようになった。

次ページ:今後の行方は

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。