「デジタル化」と「DX」はどう違う? 陥りやすい勘違いを専門家が解説

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データ分析は「大喜利」

 そこで、分析担当者を自社で養成するのも選択肢の一つです。最近は、市民データサイエンスという技術が注目を集めています。要は専門家ではない人でも、データ分析が可能になる技術です。そのデータ分析とは三つの種類に分けられます。

・記述的分析

・診断的分析

・予測的分析

 記述的分析とは、製品の売り上げに例えると、「過去に売れた製品はどれか」、診断的分析は「なぜその製品が売れたのか、売れないのか」、予測的分析は「その製品の売れ方は将来どうなるのか」ということになります。プログラムは書けなくても、そうしたデータ分析ができる人材を社内で育成できるようになれば、無理にデータサイエンティストを採用しなくてもいい、というわけです。

 こうしたデータを重視すると過去の成功例ばかりに目が向き、「クリエイティビティ」が失われるのでないか、と懸念する声もあります。ただ、私が思うのは全く逆です。データ分析は「大喜利」のお題のようなもので、お題があるからこそ、フリートークでは出てこないような思わぬ発想が閃いたりする。逆に何もお題がないと、どこを深掘りすべきなのかが分からない。ある程度の制約がある方が「クリエイティビティ」は発揮できるのです。

ボトルネックになるのは意思決定者

 さて、ある企業が、分析担当者をそろえることができ、データも溜まっている状態になったとしましょう。しかし、ここで大きなボトルネックになるのは、意思決定者の存在です。意思決定者は、会社の大きさによって変わってきます。中小企業であれば経営者や役員、大企業であれば、事業部長や部長レベル、プロダクトオーナー、現場監督のこともあります。

 分析担当者がデータを解析した結果、「ここのコストを変えれば利益率が上がる」「この購買層に訴求していけば売り上げが伸びる」ということが分かったとします。しかし、意思決定者からすると、そうした提案は自身の「経験や勘」に基づいて行ってきた意思決定とは別の方向性になってしまうことが多々あります。そこで意思決定者が「新しいことをやったら失敗してしまうかもしれない。責任を取りたくないから、やりたくない」となると、提案が却下され、せっかくのデータ分析が無駄になってしまう。

 逆にいえば、その意思決定者が「こうしたデータを活かしたい」という思いがあると、DX化はスムーズに導入できるともいえます。

 実は、データ活用の過程では、この意思決定者を含む社内の「サイクル」が非常に重要です。その「サイクル」とは、

現場→データ→分析→意思決定→現場

 というものになります。現場の社員がデータを蓄積し、社内のITシステム担当者などがそのデータを活用しやすく、アクセスしやすい状態にする。分析担当者はそのデータを適切な手法で意思決定者にフィードバックし、意思決定者は改善点を現場に指示する。その繰り返しです。

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