大減俸続出、育成再契約の乱発…不平等すぎる日本球界を変える“抜本的改革案”

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“旬の時期”を逃さないために

 一方、日本球界の底上げに必要なことは「育成選手制度」の改革と「アマチュアや独立リーグとの選手交流」だ。まず、故障で長期離脱する選手のために、育成選手とは別の枠を設けるべきである。そうすれば、70人枠の確保のために育成契約となる選手もいなくなるはずだ。そして、さらに導入したいのが、有望選手をより多く引き上げる仕組みである。日本の大学野球では、下級生の頃に大ブレイクしても、上級生になってから低迷する選手も少なくない。

 投手であれば、エースとしてフル回転が求められて、故障してしまうケースも多く、また故障はなくても、大学のレベルに慣れてしまって伸び悩むこともある。

 下級生の時のパフォーマンスであれば、間違いなくドラフトで指名されたという選手を探せばいくらでも出てくるだろう。そのような、選手の“旬の時期”を逃さないために提案したいのが、大学に在学しながらプロでもプレーできる制度だ。

 そうすれば、下級生の時にブレイクした選手が、プロでさらにレベルアップするケースも増えることは間違いない。大学にとっては主力選手が抜けられて困るという話が出てくるだろうが、4年間ほとんど公式戦に出ることなく、大学野球を終える選手が多い強豪大学を考えると、いろいろな選手にチャンスを与えられることから、有望な人材が埋もれることを防ぐことができる。

プロ野球選手は「個人事業主」

 もうひとつ提案したいのは、社会人と独立リーグの選手を対象とした“レンタル移籍制度”を設けることだ。12月9日まで東京ドームで行われていた「都市対抗野球」では、プロの選手を上回るようなパフォーマンスを選手も少なくなかった。ドラフトで指名される選手の大半は25歳以下だが、その年齢を超えてから大成する選手は確かに存在しており、そういった選手にプロで力を試す場を与えてみても、面白いのではないだろうか。

 例えば、27歳以上の選手は、通常のドラフトとは別の枠でプロが指名を行い、1年や2年などの一定期間内であれば、元の所属企業に戻れるような仕組みを作れば、プロ球団、選手、企業にとっても不利益はない。このほか、出場機会が恵まれないプロ選手を社会人野球や独立リーグに派遣して、実戦経験を積ませることも検討することも考えられるだろう。

 日本ではどうしても球団が選手に対して帰属意識を求める傾向が強い。しかしながら、プロ野球選手は「個人事業主」であり、より良い契約先を選ぶことは自然なことである。また、野球人口の減少が叫ばれていながら、現在の仕組みでは、将来有望な選手や既に実力がある選手が埋もれてしまうケースも少なくない。1人でも多くの選手が実力を発揮し、多くのファンや子どもたちが憧れる野球界になるためにも、このオフの出来事をきっかけに、あらゆる制度の抜本的な見直しを進めていくべきだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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