国内屈指のホワイトハッカーが警鐘 ガラパゴス化する日本のサイバーセキュリティ

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頑なに対策を講じない日本企業

 日本でも、来年4月に改正個人情報保護法が施行されますが、これでどこまで日本人の意識が変わるかは未知数です。というのも、日本にはサイバーセキュリティに関する費用を「無駄なコスト」と見なしている経営者や担当者がとても多い。自宅にカギをかけるのと同じように、ネットにも侵入者を防ぐ措置を講じることは当然のこと。しかも、狙われるのは、企業の信用を致命的に傷つけるばかりでなく、その後の経営に計り知れない損害をもたらすものばかり。にもかかわらず、頑なに対策を講じようとしないのが不思議でなりません。

 こうした私の主張は一種の脅しや、或いは宣伝のように聞こえるかもしれません。しかし、これがサイバーセキュリティの世界における常識であり、世界の潮流です。いずれは日本も、情報の流出や収奪を防ぐ取り組み自体が企業価値や信用を高める社会に変わっていきます。サイバーセキュリティ対策は責任ある企業の義務であり、同時にその有無で企業の価値が判断される時代が目前に迫っているのです。

 インターネットが地球上からなくならない限りハッカーの攻撃は続きますし、どんな企業や個人も、その対象になり得ます。一人でも多くの人がサイバーセキュリティの本質と対策の必要性を理解し、一日も早くガラパゴス化した甘い認識を改めてほしい。それが専門家である我々の願いです。

守井浩司(もりいこうじ)
レオンテクノロジー代表。1981年、京都府生まれ。2005年に各種サイバーセキュリティ事業を展開する株式会社レオンテクノロジーを設立。自身も最前線でセキュリティインシデントへの対処に従事する傍ら、サイバーセキュリティの第一人者としてホワイトハッカーの育英や啓蒙活動に尽力している。

週刊新潮 2021年11月25日号掲載

特集「『テロ攻撃』9億回 『身代金』数億円 国内屈指の『ホワイトハッカー』が警鐘 『ガラパゴス化』する日本の『サイバーセキュリティ』」より

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