クーポン配るなら現金でくれ…また公明党に負けた岸田総理が「家なき子」になる可能性

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「カネ(現金)をくれ」

 ネット上には「あまりにショボい」「意味不明の妥協点」「クーポンを作るのにいくら税金を使うのか」「これなら現金配るでいい」といった批判が相次いでいる。「同情するならカネをくれ」とは、名作ドラマ「家なき子」の主人公を演じた安達祐実氏のセリフだが、複雑でわかりにくい支援をするぐらいなら「カネ(現金)をくれ」との声もあがる。

 自民党中堅議員の一人は「またも公明党に押し切られた」と冷めた見方を示した。岸田氏が公明党に「煮え湯」を飲まされるのは初めてのことではない。昨年春、自民党政調会長だった岸田氏は新型コロナウイルスの影響で収入が減少した世帯を対象に「30万円」を給付する内容で当時の安倍晋三首相と合意した。しかし、公明党は「一律10万円支給」を主張し、支持母体である創価学会と太いパイプがある自民党の二階俊博幹事長(当時)も修正を迫った。

 連立離脱をちらつかせる山口代表の強硬姿勢を踏まえて、安倍首相は一度は閣議決定した2020年度補正予算案を組み替える異例の着地点を決断するほかなく、「はしごを外された形の岸田氏は一気に求心力が低下した」(自民党ベテラン議員)ことがある。1年半後、首相の座に就いた岸田氏が再び給付金をめぐる与党間の駆け引きに頭を悩ませていたのは間違いない。

 では、なぜ岸田氏は2度までも「敗北」したのか。その理由には、1999年の自自公連立政権発足から続いてきた公明党・創価学会といまだ強固なパイプを築くことができず、本気度を見極められない弱点があげられる。強すぎる「与党共闘」が重くのしかかっているのだ。

公明党の集票能力

 かつて、岸田氏が会長を務める自民党の名門派閥・宏池会の「プリンス」といわれ、首相候補と目された加藤紘一元幹事長は、公明党との連携をこのように評したことがある。「公明党は各選挙区で最低限8000票から2万票を持っている。かなり確実な集票能力がある政党だ」。小選挙区で自民党候補を応援する代わりに、比例では公明党への支援を融通する「バーター」は20年以上も続き、自民党候補者の得票を大幅にアップさせてきた。今や切っても切れないといわれるほど、その関係は自民党にとって手放せないものだ。

 実際、今回の総選挙で自民党は261議席と選挙前より15議席減らしたが、仮に公明党と共闘していなければ状況は大きく異なる。自民党は189の小選挙区で勝利をつかんだが、加藤氏が指摘したように公明党による「最低限8000票」分の得票上積みがなければ、28の選挙区で「敗北」していたことになる。栃木4区の佐藤勉元総務相や大分2区の衛藤征士郎元衆院副議長らが選挙区で敗れ、比例代表は今回と変わらずに72議席を確保した場合でも、衆院定数(465)の過半数と同じ233議席まで減っていた計算になる。

 これが「2万票」だった場合はどうか。小選挙区で敗北となる自民党の候補者はさらに29人も増える。福島2区の根本匠元厚生労働相や沖縄4区の西銘恒三郎復興相らが涙を飲み、トータルの獲得議席は単独過半数を大きく下回る204議席まで低下することになる。もちろん、計算通りというわけではないだろうが、公明党が自民党の候補者を応援せずに対立候補の支援に回ってしまえば、さらに自民党が大きなダメージを受けることを意味する。

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