パワーアシストスーツの実用化が加速 オリ・パラでも活躍、今後の課題は?

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“パワーアシストスーツ”なるものをご存じか。人が装着すれば重いモノを楽に持ち上げられる――。なにやらSFの世界のようだ。

 このスーツ、少子高齢化と労働力不足が深刻化する中、力仕事を支援する機材として俄然注目を集めている。駆動方式もバッテリーが動力源の「モーター式」や圧縮エアで動かす「空気圧式」など多様。重い荷物を運ぶ農業や物流業、工場や空港などで使われ始め、重労働の現場以外にも、医療・リハビリ施設での患者の自立支援などに導入されているという。

 実は先のオリ・パラでも陰ながら活躍していたそう。

「弊社では3種類のパワーアシストスーツを提供させていただきました」

 とパナソニックの広報部。子会社の「ATOUN」が開発したモーター式で、

「腰の負担を軽減する『MODEL Y』を20台提供、パワーリフティングのプレート交換に利用されました。腰に加えて腕もアシストする『kote』は2台、砲丸投げの砲丸回収作業に、また、歩行をサポートする『HIMICO』は3台、スタッフの長時間歩行支援に使われました」(同)

 反応は上々で、

「例えばこんなコメントが。“砲丸の重量は男子で7・26キロ。持ち上げる時にkoteが腕を引き寄せてサポートをしてくれて楽だった”といった内容です」(同)

 ただ、これで本来の能力が飛躍的に増強されるわけではない。あくまで主眼はアシスト、つまり補助。電動アシスト自転車はペダルを漕ぐ負担を軽減してくれるが、泥濘地や高速道路を突っ走る能力は与えてくれないのと同じだ。

 前述の3機種のうち販売中なのはMODEL Yと今年発売のkoteの二つ。歩行サポートのHIMICOは開発段階だが、レジャー分野にも活用されており、近畿日本ツーリスト系の旅行会社ではHIMICOを使ったハイキングツアーを試験的に実施している。

 さて、気になるお値段は「オープン価格」とか。ちなみに2018年に発売されたMODEL Yは、ネットで実勢価格75万円前後で売られている。

 まだまだ一般には手が届きにくいが、モーター式でない簡素な他社製品では数万円のものも。日本能率協会総合研究所によると、

「今後、パワーアシスト製品には医療・重労働の現場にとどまらず、個人宅での自立支援や歩行サポート用、あるいは日ごろの暮らしで活用できる個人向けのサービス拡充などが求められていくでしょう」

 いずれ電動アシスト自転車並みに世にあふれるか。

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