「デジタル庁」はトップようやく決定 買春疑惑絡みの人事白紙化で名が上がっていた「男女2人」

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ずさんな人選で

 菅義偉首相の肝いりで9月1日にスタートするデジタル庁は、事務方トップのデジタル監(事務次官に相当)に、一橋大学名誉教授の石倉洋子氏を起用する方向で調整に入った。先日までは、実業家で長らくMIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長を務めた伊藤穰一氏(55)の就任が内定していたものの、人事は差し戻しとなっていた。なかなかなり手がいない中、候補として男女2人の名が上がっていたという。

 石倉氏は日本人女性として初めて米ハーバード大大学院で経営学博士を取得した人物で、様々な企業で社外取締役を歴任してきた。加えて、政府や省庁で諮問会議の委員などの経験も豊富だ。

 石倉氏で固まるまで人事は二転三転したという。きっかけは「伊藤氏の就任内定へ」の一報だった。

 デジタルガレージの共同創業者である伊藤氏は、ネット界の風雲児として知られていた。しかし2年前、自ら所長を務めるMITメディアラボが少女への性的虐待の容疑で起訴されたジェフリー・エプスタインから、約8000万円にのぼる寄付を受けていたことが明らかとなった。伊藤氏がエプスタインの犯罪歴を知りながら寄付を受け取っていたことや、その事実を隠そうとしていたこと、そして伊藤氏の個人ファンドで資金運用を行っていたことなどがスクープされ、メディアラボ所長などの職を辞任に追い込まれていた。

 そんな過去のある伊藤氏へデジタル庁トップの話が舞い込んだことに、永田町関係者らは困惑しきりだったという。

インターネットの父も

 政治部デスクによると、

「伊藤さんは就任に前向きだったようです。それはともかく、伊藤さんの過去はそれこそネットで根拠ある形でホイホイ出て来るレベルですし、これまで彼は一度もそのことについて説明していない。ある官邸幹部はそれさえ知らなかったということですから、あまりにもずさんと言うか信じられなかったですね。18日に人事が白紙化されたのは当然でしょう」

 デジタル庁は菅首相肝いりの組織である。

「それだけに候補者の身辺調査は念には念を入れてやるはずなのに、それ以前の問題でしたから、官邸はすでに崩壊し始めていると言う人もいましたね」(同)

 人事の仕切り直しはデジタル庁発足まで2週間を切った段階で、異例中の異例だったわけだが、ともあれ政府は新たな人選に着手し、そこでは男女2人の名前が挙がっていたという。

「1人はDeNAの南場智子会長です。政府としては是非ともと考えてきたようですが、南場さんはやるつもりはなく、経団連副会長をやっていて忙しくてそれどころじゃないというスタンスだったと聞いています」

 そして、もう1人が、村井純慶応大教授だ。

「日本のインターネットの父と呼ばれる人物で、彼が本命だったと聞いています。村井さんは去年、内閣官房参与に就任していて、政府の考え方も理解しているのでやりやすいし、村井さん自身も就任に前向きだということでした。ただ、いつまでも村井さんで良いのかという意見があるのも事実で、今さらインターネットの父ってどうなの? とキツいことを言う人もいるそうです」

 9月1日の発足に間に合わないのではとも危惧されたが、そこまで人事が固まらなかったのは、ギャラの問題があったとの指摘もある。

「事務次官クラスの給料が出るとはいえ、IT業界でバリバリやっている人からしたら全然魅力的ではない。下手したらケタが違いますし、公職ともなれば当然、自由もきかなくなるということもネックになっていましたね」

デイリー新潮取材班

2021年8月26日掲載

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