【ブックハンティング】介護者が認知症当事者の視点に立って描く、切実さと苦悩

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 「食べ物がないんだよ」
 「携帯がなくなったんだよ」
 「お香典のお金がないんだよ」

 ──書いているだけであーっと小さく叫びそうになる。朝早くからかかってきて、切ってもまたかかってくる電話。「ヘルパーさんに頼んだから」「携帯はわたしが持ってるから」「お金は今度持って行くから」。伝わらないことを大声で繰り返す虚しさに苛立つ日々が1年以上続いた。そして先日、静かに終わった。

 84歳で死んだ父が認知症の症状を示し始めたのは、80歳前後だった。その数年間の出来事を書こうと思えば、いくらでも書ける。...

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