「ドラゴン桜」は前作と全くの別物と考えたほうがいい…第2話で気になった3つのポイント

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 16年ぶりに復活し、4月25日放送の第1話はビデオリサーチ調べで14.8%(関東地区)という高い世帯視聴率をマークしたTBS「ドラゴン桜」(日曜午後9時)。前作の踏襲を期待したファンからは「あまりに違う」と落胆する声も上がっているが、この作品は前作とは別物と考えるべきだ。

 今回の「ドラゴン桜」は続編と考えないほうが良い。それもあって原作の漫画は「ドラゴン桜2」でありながら、ドラマのタイトルには「2」を付けなかったのだろう。

 そもそも原作は「1」も「2」も私立龍山高(偏差値30)が舞台。今回のドラマに登場する私立龍海学園高(偏差値32)はオリジナルの設定なのである。

 前作から引き続き登場する人物も極端に少ない。第1話に龍山高から東大に入った小林麻紀(紗栄子、34)がゲスト出演したものの、それ以外は主人公で弁護士の桜木建二(阿部寛、56)とやはり弁護士の水野直美(長澤まさみ、33)の2人だけ。通常の続編ならこんなキャスティングはあり得ない。

 制作陣も全く違うのは知られている通り。前作を実質的につくったのは制作会社のMMJ。若者向けのヒューマンなドラマなどを手掛けており、3月までは小芝風花(24)主演の「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」(テレビ朝日)を制作していた。

 今回の制作はTBS本体で、チーフ演出家は「半沢直樹」(2013年、20年)を撮った福澤克雄氏(57)。「モコミ」と「半沢直樹」では180度違う。最初から異なるカラーになることが約束されていたのだ。

 映像面での前作との違いをいくつか挙げると(1)顔面アップが多い(2)照明が暗め。顔の陰影が浮き彫りになりやすい(3)広い場所での撮影が多い。大会議室、体育館、海――いずれも福澤作品の特徴的な絵柄である。

 無論、演出面でも福澤色が随所で見られる。例えば第2話でのこと。半月板を損傷しながら生徒の岩崎楓(平手友梨奈、19)が出場した関東高等学校バドミントン大会千葉県予選で、ナイスプレーが出るたび、観客が総立ちになるシーンがインサートされた。

 やはり福澤氏が演出した「陸王」(2016年)でのマラソンシーンを想起した人もいるのではないか。沿道に大勢の観客が並んだ。一般視聴者中で希望者から選ばれたエキストラだった。これによって映像に迫力とリアリティーが出た。そのどちらも福澤氏は重んじる。

「ジャイ(福澤氏の愛称、「ドラえもん」のジャイアンから)はADのころから人を集めることと動かすことがうまかった」(TBSの先輩演出家の故・鴨下信一さん)

 及川光博(51)、江口のりこ(41)、木場勝己(71)、山崎銀之丞(58)と「半沢直樹」ファミリーが複数出演している。だが、見る側が半沢色を感じる最大の理由は福澤氏のつくる映像と演出が独特だからにほかならない。

勉強法が出てこない

 ストーリーも福澤色が鮮明。主人公が立ち塞がる敵を次々と倒すところである。「半沢直樹」も「陸王」もそうだった。今回もそれは踏襲されている。

 今回の敵は自由教育を掲げる龍海学園理事長の龍野久美子(江口のりこ)、東大に落ちたことで桜木を逆恨みする米山圭太(佐野勇斗、23)、そのバックにいる謎のIT企業社長の坂本智之(林遣都、30)。

 雑魚キャラもいたが、これは簡単に退けられた。第1話で桜木や水野に悪さの限りを尽くしたが、桜木にオートバイで追いまわされ、あっさり白旗を上げた生徒の小橋(西山潤、22)と岩井(西垣匠、21)だ。第2話では桜木の子分になっていた。

 2人はバドミントン部コーチの宮村(盛隆二、44)と部員の清野利恵(吉田美月喜、18)の不適切な関係と、楓を陥れた陰謀を暴いた。お手柄だった。その陰謀によって楓は膝に決定的なダメージを与えられた。

 小橋と岩井のような生徒は前作には登場しなかったので、面白い存在である。前作での桜木は特進クラスの5人の生徒にほとんど付きっきりで、ほかの生徒と向き合わなかった。東大を目指さない生徒とも接したほうが学園ドラマとしては自然だ。

 ちなみに小橋と岩井は眉を剃っているので区別が付きにくいものの、小橋役の西山は子役として芸能界入りしたデビュー14年のベテラン。NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」(2019年)にも出ていた。1932年のロス五輪での水泳100メートル自由形、800メートルリレーの金メダリスト・宮崎康二役だった。

 片や岩井役の西垣は今年デビューしたばかり。慶應大法学部に在学中で福澤氏の後輩にあたる。世間が抱く現役慶大生のイメージとは懸け離れているところが面白い。

 桜木がコーチの宮村に対し、「教師として以前に、あんたは人間として落第だぁ!」と吠えたシーンは痛快だった。前作では保守的な教師との対立こそあったものの、倫理までは説かなかったからだ。宮村がクズ過ぎるせいもあるが…。教師の中にはクズもいるのは誰もが知る通り。それを描いたことにも意義があったはずだ。

 前作では東大合格者を出すことにより、龍山高を人気進学校に押し上げ、ハッピーエンドとなった。今回は龍海高を一度ぶっ壊し、一から作り直すつもりではないか。久美子の考えをあらためさせたら、それは可能だ。

 第2話まで売り物であるはずの勉強法がまったく出てこなかった。それも良いと思う。前作で十分紹介し、もはや何が出てきても驚きはないからだ。一方、今回は勉強法以外で取り上げるエピソードが興味深い。

 例えば、第2話では大学の体育推薦の問題が扱われた。大学側は有望選手だった楓に擦り寄りながら、西村と利恵の陰謀もあって半月板を損傷すると、あっさりと利恵に乗り換えた。楓へのケアは微塵もなかった。

 オーバーな表現とは思えなかった。体育推薦で入学した学生は故障などで競技生活を送れなくなった時点で退学を余儀なくされることがある。おかしな話だ。体育推薦はドラマでほとんど描かれてこなかったので、知らしめられて良かった。

 ゼロベースで作られたとも言える今回の「ドラゴン桜」はテーマを東大受験に絞らず、教育現場の問題点を出来る限り浮き彫りにするのだろう。現時点ではそう映る。前作よりスケールが大きくなりそうで期待できる。

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