天海祐希、佐藤浩市、仲里依紗、仲野太賀…豪華俳優陣で送るNHK Eテレ「昔話法廷」の見どころ

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「赤ずきん」の吉田羊、竹中直人

 過去、裁判になったのはこの「カチカチ山」のほかに、「三匹のこぶた」「白雪姫」「アリとキリギリス」「舌切りすずめ」「浦島太郎」「ヘンゼルとグレーテル」「さるかに合戦」「ブレーメンの音楽隊」「赤ずきん」だ。

 いずれも主なキャラクターが被告人となっていて、他のキャラは証人として呼ばれている。

 罪状も多くは「刑法第199条の殺人罪、第203条の殺人未遂罪)」だが、ヘンゼルとグレーテルは「刑法第240条の強盗致死罪」(魔女を殺して金貨を奪った)、「アリとキリギリス」のアリは「刑法第219条の保護責任者遺棄致死罪」(キリギリスに食料を与えず餓死させた)に問われている。ね、ちょっと面白いでしょ?

 私が最も面白いと思ったのは「赤ずきん」の回。

 赤ずきんがオオカミを殺した殺人罪に問われているのだが、弁護側は「刑法第39条」を掲げ、赤ずきんの心神喪失状態で無罪を主張。検察官は吉田羊、弁護人は竹中直人、被告人の赤ずきんは佐藤玲、証人のおばあさんを角替和枝が演じていた。

 あ、そうそう、証人のオオカミの母は神野三鈴が声を担当。

 赤ずきんの計画的犯行であり、心神喪失を装ってわざと残虐で異常な行為(オオカミの腹を裂いて、石を詰めて麻ひもで乱雑に縫合)をアピールしていると主張する検察官の羊姐さん。実際に犯行に使われた大量の石をわざわざ法廷にもちこみ、裁判員に見せつける印象操作も。

 弁護側の竹中は赤ずきんの精神鑑定を提出し、「一度オオカミに飲み込まれたことによる低酸素脳症状態で、想像を絶する死の恐怖を味わった赤ずきんは強い心的外傷を負った」と反論。

 でも、泣きながら無実を訴える赤ずきんの佐藤が、なんだか疑わしく思えちゃったりしてね。39条をもってくるあたり、実に生々しくて巧妙。

主演級に成長した役者を青田買い

 架空の設定を盛り込んだ、法廷での攻防戦は実に質の高い脚本でもある。

 そもそもこの企画を立案した人に拍手喝采を送りたい。

 脚本は中高生向けの小説本にもなっているので、法律家をめざすお子さんにはぜひとも勧めたいところだ。あ、お子さんだけじゃなく大人にも。

 個人的に、最大の見どころは役者陣。検察官も弁護人も証人も裁判員も、はては着ぐるみのキャラの声も聞き逃すまじと思うキャスティングだから。

 今をときめく人気俳優、納得のベテラン俳優、地上波ドラマではめったにお目にかかれない俳優がうっかり登場するのよ。

 まず目玉と思ったのは、「さるかに合戦」の検察官役で登場した小林聡美。WOWOWか映画にしか出てこないからなぁ。そして、中高年の皆さんは「ゆれる、まなざし」と言えば通じるかな、真行寺君枝が「白雪姫」の意地悪な王妃役で登場しているのよ!

 前述したうっかり八兵衛の高橋元太郎に、格さんの横内正も玉手箱開けちゃった浦島太郎役で出てきたりして。在りし日の姿をしのぶという意味では、志賀廣太郎や角替和枝もね。

 着ぐるみの動物もうっかり気を抜けない。

「あれ?この声…」と思うと、中村倫也に内田慈、浜野謙太や前野朋哉だったりして、私の好きな俳優陣が目白押し。

 裁判員役は若手俳優の宝庫で、小芝風花に松本穂香、須賀健太に泉澤祐希と、主演級に成長した役者を青田買いしとる。

 やはり検察官役は見せ場が多い。

 検察官はなんつっても昔話の善玉キャラを有罪に追い込むのだから、手練れ感が求められる。

 被告人を追い込む舌鋒の鋭さと怜悧さが必要。言葉巧みにじわじわと執拗に責めた後、さらっと「終わります」と質問を切り上げる底意地の悪さもね。

 そのせいかしら女優が多い。小林聡美に安藤玉恵、木南晴夏、美村里江、吉田羊に国仲涼子などそうそうたるメンツで固めている。そういえば、林遣都も検察官役で登場していたなぁ。

 また、「昔話法廷プラス」(3月22日放送)では、NHKのアナウンサーと司法担当の解説委員(実在の人よ)が裁判の争点をクソまじめに解説するという架空のニュース番組も挿入されていて、面白い。

 それもこれも、29日午前9時~、新作で最終話が放送するからだ。

 しかも、検察官は天海祐希、弁護人は佐藤浩市ですってよ。

 お話は「桃太郎」。

 確かに、鬼殺しの桃太郎は殺人罪に問われるね。仲野太賀が桃太郎、殺された鬼の妻を仲里依紗が演じるそう。そして…脚本はあの森下佳子! もってくねぇ~。かっさらうねぇ~。楽しみである。

 過去作品はいずれも15~20分、「NHK for School」のサイトで観ることができるので、ぜひ。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月29日掲載

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