コロナ禍で活躍「民間救急」の知られざる実態 “通常の仕事が半減”という苦悩も

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“救急”とはいえ

「民間救急」をご存じだろうか。新型コロナウイルスの感染拡大で、活動がクローズアップされているが、その実情はあまり知られていない。平時の業務や、需要が急増したコロナ禍での搬送とは、どのようなものなのだろうか。

 私たちが普段「119番」通報を行うと駆けつけるのが、行政の救急業務を担う「消防救急」だ。公益財団法人東京防災救急協会の担当者が、「民間救急」と「消防救急」の違いを説明する。

「119番要請者のところへ赤色灯をつけて駆けつけるのが消防救急です。緊急自動車であるため、停止義務免除や右側通行など法令上の特例があり、搬送先は、基本、救急隊が受け入れてくれる医療機関を選定します。一方、民間救急は赤色灯がなく、一般の車両と同じように緊急走行ができないので、赤信号では必ず停止しますし、法定速度も遵守しています。

 また、一般的に民間救急では何時にどこに行くかは事前に利用者が決め、搬送事業者が医療機関を選定することはありません。そして消防救急と大きく異なるのは、民間救急の場合、利用時間や走行距離、車いすやストレッチャーなどの使用機器、介助・看護をする付添人、車の大きさ等によって変わりますが、料金がかかることです。通常はおもに緊急性が低い患者の通院や受診、入退院、病院から病院への転院搬送などに使用され、病院以外への搬送も可能です」

「救急」とうたうからには、「消防救急」と同じように、呼べばすぐに駆けつけてくれるものだと思っていたのだが、

「もっともなご指摘で、“救急”とつけば、そのような認識を持たれてしまうのも仕方ありません。実際、利用者の方から『救急なのに早く走れないの?』と言われることもあるようです。実は民間救急は俗称で、正式には『患者等搬送事業者』となります。一般乗用旅客自動車運送事業等の許可を受けたサービスになり、介護タクシーやサポートCab(キャブ)なども同じカテゴリー。医療行為はできないものの、応急手当などは可能ですし、事業者によっては介護福祉士や看護師、救急救命士が同乗しているところもあるので救急と呼ばれるのではないでしょうか」

対応は20社ほど

 新型コロナの感染拡大は、民間救急にどのような影響を及ぼしたのか。

「東京都では、平時から『救急需要対策』を行っています。行政救急の需要を抑えて本当に必要な方を搬送することができるように、救急車の適正利用を心がけて、救える命を救おうと、『緊急性の低い方は民間の救急車やサポートCabを利用してください』という広報を行っています。

 なので、コロナ禍では、東京防災救急協会が東京都福祉保健局からの要請を受けて、東京民間救急コールセンター内に保健所とのホットラインを設置し、保健所からの依頼を受けて、民間救急事業者をご案内しています。そもそも指定感染症に定められた時点で、行政の救急車両は利用できず、保健所が扱う車両か民間救急を利用することになっていますので。

 コロナの感染拡大にともなって、通常の業務のほかに、コロナ患者だけでも昨年の2月7日から今年の1月31日までで1037件を扱っています。なかでも昨年の4月、7月、12月、今年の1月は非常に多く毎月3桁の依頼がありました。ただ、これは東京民間救急コールセンターに依頼があった数なので、保健所や個人から直接、それぞれの事業者に依頼が行くこともあり、東京都の全体数ではありません。

 東京民間コールセンターに登録している事業者は約100社ですが、コロナ対応ができるのは20社あまり。特定の業者の負担が大きくなっています。コロナ患者の搬送に協力したいと思っても、基礎疾患を持った特定の顧客の中には不安に思う方もいるので、踏み出せないという事業者もあるようです」

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