「俺の家の話」早くも1桁 面白いけど数字が取れない「クドカンドラマ」の謎を解く

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クドカンは数字を持ってない

「クドカンが数字を持っていないということは、業界では誰もが薄々感じていましたが、今や“定説”になっています。朝ドラのルネッサンスと言われ、名作と称えられる『あまちゃん』(NHK・13年上期)だって、全話の平均視聴率は20・6%です。放送終了後の喪失感から“あまロス”という言葉まで生まれましたが、実は視聴率的には前年上期の『梅ちゃん先生』(平均20・7%)のほうが高いんです」

最低視聴率で2冠

 21世紀の朝ドラを眺めると、「あまちゃん」の平均視聴率を超えた番組は、「ちゅらさん」(01年上期:22・2%)、「ほんまもん」(01年後期:22・6%)、「さくら」(02年上期:23・3%)、「まんてん」(02年後期:20・7%)、「梅ちゃん先生」、「ごちそうさん」(13年後期:22・3%)、「花子とアン」(14年上期:22・6%)、「あさが来た」(15年後期:23・5%)、「とと姉ちゃん」(16年上期:22・8%)、「半分、青い。」(18年上期:21・1%)、「まんぷく」(18年後期:21・4%)「なつぞら」(19年上期:21・0%)と12本もある。

「視聴率で見ると、『あまちゃん』は平均そこそこといったところ。もちろん、数字だけがドラマの善し悪しを決めるものではありませんし、心に残る名作であることは間違いありません。とはいえ、数字が取れないクドカンドラマは、これだけではないのです」

 実を言うと、枠の最低記録を2つも保持しているという。

「記憶に新しいのは、一昨年の大河『いだてん~東京オリムピック噺~』でしょう。初回こそ15・5%を取りましたが、数字は落ち続け、6話以降は全て1桁、39話では3・7%の最低記録を出してしまった。全話平均8・2%は史上最低、大河初の1桁となりました。また、『半沢直樹』や『下町ロケット』などヒット作を立て続けに放送しているTBSの“日曜劇場”枠では、14年10月期に錦戸亮主演の『ごめんね青春!』の脚本を担当しました。『あまちゃん』終了後、初の連ドラと注目され、初回10・2%と2桁でしたが、平均視聴率7・7%に終わりました。これも日曜劇場の最低記録です」

 クドカンが手がけた主なドラマを見てみよう。

 むろん、全てが低視聴率というわけではない。

「視聴率が良かったのはまず、脚本家単独デビュー直後の『池袋ウエストゲートパーク』(TBS)ですが、クドカンドラマというより石田衣良の原作ドラマとして有名です。さらに『金田一少年の事件簿』(日本テレビ)や『TRICK』(テレビ朝日)で飛ぶ鳥を落とす勢いだった堤幸彦監督作品という意味合いも強かったと思います。織田裕二の『ロケット・ボーイ』(フジテレビ)の数字も良いですが、これは織田の体調不良により全11話が7話になったものなので、公式記録と言えるかどうか。『流星の絆』(TBS)も東野圭吾原作のドラマです」

 ♪俺の話を聞けぇ~で落語ブームを復活させた「タイガー&ドラゴン」(平均12・8%)や多くの俳優が影響を受けたと言われる「木更津キャッツアイ」(平均10・1%)なら、オリジナル作品だし、これぞクドカンドラマと言えそうだ。

「いずれも名作と呼ばれファンも多い作品です。けれど、『タイガー&ドラゴン』は初回16・2%でしたが、数字を落としていき、初回を超えることがないまま終わりました。『木更津キャッツアイ』も初回13・4%を超えることなく尻すぼみでした。そして今回の『俺の家の話』も同じ轍を踏みそうな気配です」

 どうしてクドカンは数字を取れないのだろうか。

「クドカンドラマといえば、お馴染みの役者を起用することが多いですよね。今回の長瀬智也はじめ岡田准一、同じ『大人計画』で仲の良い阿部サダヲ、荒川良々、ほかにも西田敏行や古田新太などなど。なんだか画面から来る“圧”がすごいんですよ。特に今回、長瀬はプロレスラー役ということで体まで作ってきているから強烈です。体臭がムンムンとでも言うか。今のトレンドとしては、やはり福士蒼汰や松坂桃李、中川大志といった女子に寄り添う草食系、菅田将暉や吉沢亮のような見た目も爽やかな快活さのある俳優を出さないとね」

 画面からの“圧”こそ、クドカンドラマの魅力であるのだが……。

「それと、いかにも男子校育ちの男目線、学校をサボって池袋の西口公園にたむろしているような悪ガキ目線が多い気がします。これでは視聴者の半分はいる女子の心を打つような、胸が痛くなるほどの恋心、人間の弱々しさや諦めといった上を引く場面が薄いんです。女優のキャスティングもお馴染みの人が多く、薬師丸ひろ子や小泉今日子、今回の戸田恵梨香など若い独身女優がいないんです」

 確かにクドカンは、バンカラな校風で知られた宮城県築館高等学校(当時は男子校)の出身ではある。とはいえ、ファンはクドカンドラマに、恋や諦めなど求めていないのではないか。

「そうです。それは制作者側にも言えるのかもしれません。TBSに限らず、プロデューサーは、彼の作品を気に入っているから依頼するわけです。今や大物脚本家であるクドカンと交渉をして、書いてもらえるだけで有頂天になってしまう人は少なくないはずです。結果、脚本家の言いなりになってしまい、脚本家は我が道を突っ走ることになる」

 クドカンには突っ走ってもらいたいが、

「個人的に言えば、『俺の家の話』は文句なしに面白いです。毎回楽しみにしています。新婚の戸田恵梨香の演技は素晴らしいですし、ロバート秋山、三宅弘城、荒川良々の使い方もいい。長州力までカメオ出演してますからね。さすがです。でも、残念ながら数字は取れないでしょうね」

 結局、クドカン好きだけが見ればいいということらしい。

デイリー新潮取材班

2021年2月5日掲載

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