「麒麟がくる」で長篠の戦いがスルー クライマックス「本能寺の変」は大丈夫か

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目玉は合戦にあらず?

「今回は、時代劇ファンにとって重要なシーンがスルーされることが増えていますね。例えば、最初の対朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)戦、いわゆる金ヶ崎の戦いでは、織田軍は同盟関係にあった浅井長政(金井浩人)に背後を突かれて敗走するわけです。この浅井の裏切りに気づく過程も、これまでとはずいぶん違っていました」

 これまでドラマで描かれてきたのは、浅井に嫁いだ信長の妹・お市から、信長に寄こした陣中見舞いの小豆の袋が、両端で縛られていたことから、挟み撃ちに遭うと信長が感づくというものが多かった。

「しかし今回は、光秀の右腕である左馬助(間宮祥太朗)の働きにより、浅井裏切りの第一報を手に入れました。これはいいとしても、その後の退却劇では、死を覚悟してシンガリを願い出た木下藤吉郎(佐々木蔵之介)が、涙ながらに虐げられてきた過去を長々と語りました。シンガリは自ら犠牲となることで、信長はじめ織田軍を逃がす役ですからね、思いを語るのは結構ですが、ここでも戦闘シーンはほとんどなく、あっという間に帰ってきた。その後の復讐戦・姉川の戦いでも戦闘シーンは大幅にカットされていました」

 信長の残虐性を表現するシーンとして有名な、浅井・朝倉の髑髏(どくろ)に金箔を張って酒の肴にするなんてシーンもなかった。

「コロナ禍ですからね、大勢の俳優を集めた合戦シーンの撮影が難しかったということでしょう。NHKとしては、『麒麟がくる』の目玉は合戦ではない、と言いたいのかもしれません。なにせ主役の光秀は、戦が嫌いな武将です。戦以前の政治的調整、根回しが上手い人、理屈で動く人ですから、どうも感情移入できないんです。その点、人間的に正しい、正しくないはともかく、同情などするなと切腹した三淵や、信長が欲しがる名茶器“平蜘蛛(ひらぐも)”だけは絶対に渡さんと意地で死んでいった松永のような熱い男のほうが、視聴者の心は動きます。やはり理屈じゃないんです」

 さらに、調整役・光秀の苦労が報われなくする人々にも違和感があるという。

「駒さん(門脇麦)や伊呂波太夫(尾野真千子)、そしてナイナイの菊丸(岡村隆史)ら、実在しない人々のシーンが多く、しかも活躍しすぎです。帝(みかど)や将軍にまで会うことができたり、歴史を動かしているのはこの人たちになってしまっているから、視聴者は納得いかないまま話が進んでいく。松永の死後、平蜘蛛が無事に残っていて、光秀の元に持ってきたのが伊呂波太夫ですからね。またかよ、と……」

 現在、この平蜘蛛のせいで、光秀は信長から疎んじられている。

「光秀が何をきっかけに本能寺の変を起こしたのかは諸説ありますが、長谷川演じる光秀は熱い男ではないので、この先が心配になります。ひょっとすると、『敵は本能寺にあり!』のセリフもなく、本能寺の変はリモートになったりしないでしょうね」

 果たして麒麟は呼べるのか?

週刊新潮WEB取材班

2021年1月17日掲載

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