「詐欺電話」を自動解析するAI、サービス開始 防止効果は?

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 犯罪撲滅にAI(人工知能)がひと肌脱ぐか。オレオレ詐欺や架空請求詐欺などの特殊詐欺。これに対抗する新サービスをNTTが11月30日から開始した。

「NTTのアナログ回線の固定電話に専用機器を設置すると、通話が詐欺かどうかAIが解析してくれます」

 とはNTT広報。

「まず、電話をかけてきた相手に『この通話は特殊詐欺防止対策のために録音されます』という旨のメッセージが流れます。その後も通話が続くと、AIがやりとりをテキストデータに変換し、そこに“振り込み”といったキーワードがあるかを解析。前後の文脈から詐欺か否かを判断します」

 NTTは、警視庁提供による実際の“詐欺通話”をAIに学習させ、昨年8月末から東京都内の高齢者ら70世帯での実証実験も行い、精度を高めてきたという。

「詐欺だと判断されると、事前に登録されていたご家族や友人に、メールか自動音声による電話で『〇時〇分の電話は犯罪の疑いがあります』という連絡が届きます。メールは5件、電話番号も5件まで登録可能。AIは2分ほどで解析を終えるため、ある程度の長さの通話なら、その途中で誰かに連絡が行く形です」(同)

 利用者がどこかへ電話をかける際も「録音します」とのガイダンスが流れる。犯罪者から「かけ直してくれ」と誘導され、被害に遭うこともあるためだ。

 費用は月額440円。設置には4400円かかり、工事担当者が出向くと別途4400円必要だ。今のところ光回線にはつなげず、アナログ回線のみとなるが、

「アナログ回線は約1200万回線に上り、高齢者宅の多くがこちらです」(同)

 警察庁によると、昨年の特殊詐欺の認知件数は全国で1万6836件。被害額は約301億円で、8年連続の300億円超えとなる。今年はコロナ禍で在宅の人が増え、被害も増加しそうだというからいまいましい。

 神奈川県警OBで犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は、それゆえ今度のサービスには期待したい、と語る。

「特殊詐欺のかけ子は、録音されているとわかると電話を切ります。彼らは通常、1日100件から150件もの電話をかけており、やりとりの音声が残るようなリスクや面倒は避ける。つまり録音通知だけで抑止効果があります」

 いっそ国家事業として導入を進めてほしいくらいだが、65歳以上の高齢者がいる約2千万世帯に設置するとなれば、さすがに負担が大きすぎよう。だが、

「地方自治体によっては、自動通話録音機をすでに高齢者向けに無料で貸し出しています」(同)

 というから、今度の新サービスも、希望者には公費で導入支援するくらいのことはしたっていいのでは?

週刊新潮 2020年12月17日号掲載

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