「反日緩和」に舵を切った文在寅、市民団体の「反日激化」が彼を苦しめる

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反日カードの効果が低下して

 11月18日、ソウル市鍾路区の旧日本大使館付近の、いわゆる“平和の少女像”が建てられた場所で、慰安婦支援団体と保守団体が衝突する騒ぎがあった。

 旧日本大使館前の少女像周辺では、日本政府に謝罪と補償を要求する「水曜集会」が毎週行われてきた。

 その場所で、保守団体が慰安婦支援団体に向かって「少女像撤去、正義連の解体、尹美香拘束」と叫び、「慰安婦と少女像で金儲けする正義連と尹美香に献金したら気分が良いのか」と憤りの言葉をぶつけていたのだ。

 この慰安婦支援団体の正義記憶連帯(正義連)と、政権与党・共に民主党から出馬して国会議員に当選したのが、他ならぬ尹美香前理事長である。

 そして、彼女の寄付金の横領や流用などの疑惑が提起されたのが今年5月のこと。
 
 検察が、尹美香議員を横領、背任、詐欺など8つの容疑で起訴すると、慰安婦支援団体は激しい非難を受け、従軍慰安婦被害者と称するおばあさんたちの証言の信憑性も疑われて、「水曜集会」に反対する声が大きくなっていく。

 保守性向の団体だけでなく、一般市民までもが「もうだまされない」と嫌悪感を抱き、国民が分裂して互いを憎悪、深刻な状況になりかねない懸念が高まるなか、頭を痛めている人がいる。

 反日主義者で自称平和主義者の文在寅大統領だ。

 尹美香裁判は、起訴後2ヵ月が過ぎてようやく開かれる。

 昨年、“NO JAPAN”を叫ぶ反日と日本製品不買運動を扇動した文在寅大統領は、安倍政権から菅政権に変わると、その態度を軟化させた。

 側近の韓国国家情報院長と韓日議員連盟所属の国会議員らを派遣し、菅義偉首相に「対話」を要請したのもその一例だ。

任期後半に入ってのイメージ戦略

 日本に実益がない彼らの提案に、日本政府は反応を示さなかったのだが、任期後半に入った文大統領は、支持率を支えてきた反日カードの効果が低下し、来年の東京五輪で北朝鮮との「平和ショー」でイメージ回復を図るべく、腐心している。

 しかし、慰安婦と元朝鮮人徴用工の賠償問題が彼の足を引っ張っているのは間違いない。

 世論が尹美香議員の辞任を強く求めるなか、当の彼女は正面から対峙。検察は尹議員を起訴して、裁判に突入した。

 政権与党はもちろん文大統領の支持率も下がりはじめ、少女像周辺には反対を叫ぶ人々が1人2人と集まるようになった。

 尹議員は9月に起訴されたが、11月30日になってやっと最初の裁判が開かれたような状況で、“裁判所が文在寅政権の顔色を見ている”と世論の非難が高まったのも当然だろう。

 被告となった尹議員の行為で、慰安婦団体と少女像に反対する世論が保守右翼だけではなく、一般市民の間でも拡散した。

 国民間の深刻な分断は、文大統領が収拾できない事態にまで広がったのだ。

 徴用工賠償問題も同じだ。

 2018年10月30日、韓国最高裁判所が、元朝鮮人徴用工が新日本製鉄を相手取って起こした損害賠償訴訟で原告勝訴の判決を下すと、日本政府は国際法違反であり受け入れられないと述べた。

 しかし、文大統領は「司法の判決に政府が介入できない」として傍観を決め込んだ。

 日本政府が韓国向け輸出管理を強化すると、韓国は報復の規制措置だと反発して不買運動に突入。

 両国関係は冷え込み、現在は日本との対話を望む文大統領にとって、収拾不可能な問題の一つとなってしまった。

 菅首相は、韓国の対話要請に対し、徴用工賠償問題に対する韓国側の措置が先という立場を明らかにしている。

 しかし、韓国裁判所の命令による日本企業の資産の差し押さえは12月30日から可能となり、その後は資産売却もできるようになる。

 文大統領が問題を散らかしながら、自身では片付けられずにいる間、市民団体は依然として反日運動を展開し、文大統領をさらに窮地に追い込んでいることになる。

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