悪いヤツほどよくドヤる! 「半沢直樹」や田中みな実…不況のドラマ界を回す怪演戦略

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「#半沢直樹」が5週連続してツイッターの世界トレンド1位だという。平均視聴率も20%の大台超えと絶好調。東京オリンピックがなくなった今、ドラマ「半沢直樹」はオリンピックに代わる国民的祭典と化しているのではないか。小池都知事もさぞ悔しかろう。

 そんな都知事を模したようなキャラクターが「い・ま・じゃ・な・い」と滝川クリステルばりに微笑む「半沢直樹」は、顔芸の宝庫でもある。主演の堺雅人の表情筋は、前作より2割増くらいで動いている気がする。宿敵・大和田役の香川照之は「お・し・ま・い・death!」とたたみかけ、相変わらずの押し出しの強さだ。市川猿之助演じる伊佐山部長も、「詫びろ詫びろ詫びろ詫びろ!」と歌舞伎ばりの見得を切りまくる。

 前作はまだ、悪役たる憎らしい存在感を出していた香川。しかし今作では顔芸が先立ちすぎて、卑劣さより滑稽さが勝つ。もはや悪役なのに憎めない。歌舞伎では悪役でありながらおかしみのある役柄を「半道敵(はんどうがたき)」と言うそうだが、まさに半道敵の真骨頂のようである。悪役たちの方が楽しそうに見えるくらいだ。

 思えば前クールの話題作「M 愛すべき人がいて」も、田中みな実演じる秘書・礼香の怪演がヒットの起爆剤となった。彼女もまた、ネットで話題になればなるほど顔芸が増えたクチである。後半はやはり、悪役というよりただの珍妙なキャラになっていた。けれどもこの役によって、田中の好感度や業界評は上がったのである。先日は女優業にシフトすると、事務所の移籍も報道された。

 振り切った顔芸で、主役を食う。作品としては破綻しようとも、タレントとしては人気が上がる「憎めない悪役」と言う美味しいポジション。悪役だろうとドヤ顔を決めれば決めるほど得をする時代だ。怪演ぶりが話題になるほど、視聴者の興味を引くことは確実なのである。

 昔は主人公をいじめる役をやるだけで、街ゆく人から嫌味を言われたという芸能界。作品の役と実際の人物像を混同する方がおかしい。だが、役者の性格が悪いから悪役の芝居がうまく見えるのだ、と思っている人も多いのは確かである。さらに今は、ネットの中傷や炎上に皆が敏感になり、コロナ禍で人々のストレスも増している。心底ムカつくような悪役をテレビに出すことは、テレビ局にとっても俳優にとってもいいことはないのだろう。悪役だけど、笑って見られる。振り切りすぎてて、憎めない。そういう役が今、最もドラマ界で必要とされているように感じる。

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