町長の「一人部署パワハラ」疑惑で炎上  告発職員の“裏”の姿

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 町役場のミスを内部告発した職員が、一人で“座敷牢”に閉じ込められた――。山口県田布施(たぶせ)町で起きたパワハラ問題が大々的に報じられているが、聞けば、どうやら町側が一方的に悪いという話でもなさそうで。

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 安倍首相の祖父岸信介元首相や、伯父の岸信和氏が眠る田布施町。人口1万5千人ほどの小さな町だ。その町名が一気に全国区となったのは6月8日のこと。

〈告発職員 畳部屋に隔離か 山口県田布施町の税徴収ミス 1人部署に異動〉

 地元の中国新聞がこう報じたことで、町は上を下への大騒ぎ。その経緯を大手メディアの記者が解説する。

「2018年に税務課配属となった40代後半の職員A氏が告発者です。A氏が固定資産税の徴収ミスに気づき、報告したのに上司は対応しなかった。A氏は町議に訴え、町議が町に指摘したことで、昨年、町はミスを認めました。そして今年、A氏は30年ぶりに設けられた町史編纂室へと異動となり、役場横の公民館の一室に追いやられた。それが報じられ、ネットなどを通じて拡散したわけです」

“報復人事”“パワハラ異動”の大合唱。町には数百件の苦情電話が届いた。

「中国新聞が報じた当初は、A氏にも問題があるという役場関係者の声も紹介されましたが、消えました。A氏の業務評価を上司が“0点”にした事実が判明したり、町長宛に“夜道は気をつけろ”だとか“ピストルの弾がある”といった脅迫電話が入り、騒ぎが大きくなったからです」

「法的措置をとる」

 現在、町役場内の問題は「第三者委員会による調査」の沙汰待ちだが、さる町議は声をひそめて語る。

「徴税ミスは、土地所有者の死亡後、相続の登記が済んでいない事例で免税されていなかったというもの。過徴収は18年度分の18件で計2万8千円ほど。20年以上も同じミスが続いていたと思われるので、現在は過去分を調べています」

 ミスはミス。長年、放置し続けた町の落ち度である。

「ですが、内部告発と報復人事で火花を散らすような額とも思えないのです。実際、町の責任を声高に叫んでいるのは一部の町議だけ。ほかの十数人は冷めています。正直申し上げて、A氏が原因でノイローゼ気味になった職員がいることや、彼の態度に問題があるのも事実だからです」

 東浩二町長に訊くと、

「人間関係が背景にあるようですが、それぞれの言い分もあるでしょうし……。私は、彼の採用担当者でした。昔は野球部に入って皆とうまくやり、仕事も頑張っていたんです。どうやったらそのころの彼に戻ってもらえるか……。畳部屋についても、一人で隔離するつもりなどありませんでした。外部の協力者に来てもらう予定だったんです」

 と口が重いが、町役場の職員はこう明かす。

「彼は18年に内部告発して以来、2年で3回異動しています。報復人事と報じられていますが、本当にそうなのか、まだ分からない。彼は上司に対しても正論を振りかざして、自分の意に染まないと、“法的措置をとる”としつこく繰り返す。些細なことでも吊し上げる。職員がノイローゼ気味になってしまうほどにですよ。彼の振る舞いで機能不全に陥る危機なんです」

 それはさながら、コロナ禍で話題となった“自粛警察”のようだという。当のA氏を自宅に訪ねると、

「一応、私の状況は改善されることになりましたので、もう、そっとしておいてほしい。それだけです」

 自粛警察のような棘々(とげとげ)しさはなく、淡々と、そう答えるのだった。

週刊新潮 2020年7月2日号掲載

ワイド特集「梅雨の晴れ間に」より

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