「見なければいい」では済まないネットの誹謗中傷(KAZUYA)

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 先日、女子プロレス団体のスターダムに所属する木村花さんが22歳の若さで亡くなりました。フジテレビ制作の「テラスハウス」に出演するなど、プロレスの枠を超えた活躍を見せていましたが、同番組でのある事件をきっかけにネット上で誹謗中傷が大量に寄せられ、それを苦に自ら命を絶ったと見られています。

 僕は新日本プロレスを中心に見ているので、女子プロはそこまで詳しくありませんが、木村さんが将来有望だというのはわかります。スターダムはここ数年、宝城カイリ選手、紫雷イオ選手など主力がアメリカのWWEに移籍していました。そんな中で岩谷麻優選手を中心にストーリーが組まれ、若くてビジュアルも良い木村さんへかかる期待も大きかったのです。

 それを証明するように、今年のイッテンヨン(毎年1月4日に行われる新日本プロレスの東京ドーム大会)では、第0試合ながらもタッグマッチで木村さんを含むスターダム提供のカードが組まれました。

 これは新日本プロレスのオーナー企業であるブシロードが、昨年スターダムも傘下に収めたため実現したものです。新日の興行に女子がマッチメイクされるのは珍しいことで、スターダムとしても選りすぐりのカードを組んだのでしょう。その実験的な試合に木村さんが入るということは、それだけ期待されていたはずです。

 スターダムの状況的に「将来」は遠い未来ではなく、あと1、2年もすれば木村さんがトップの一角としてベルトを巻いていたのだろうと思います。そんな木村さんを失うのは、日本プロレス界にとって大きな損失です。

 木村さんの死をきっかけにネットの誹謗中傷について議論が沸騰しました。

 今は誰もがSNSをやる時代です。何かあればSNSを通じて本人に直接声が多数寄せられますし、見なければいいという問題でもなくなってきているのです。

 いつ自分がその対象になるかわかりません。いかに誹謗中傷の悪意と向き合っていくかは、誰もが考えておく必要があるでしょう。

 もちろん前提条件としては誹謗中傷をやめようとなりますが、そもそも自覚がない人もいますし、匿名でバレないと思って暴言を書く人や、皆やっているからと自己正当化する人、中には人生捨ててるような人もいます。これらが完全になくなることは期待すべきではありません。

 極端なものは訴えた方がいいでしょう。今後の抑止にも繋がります。しかし多くは取るに足らないものです。そういうのは反応すると喜ぶだけなので、放っておくのがいいでしょう。向き合うべきは誹謗中傷より、応援してくれる人です。

 木村さんの死はコロナ禍も一つの要因になったのかもしれません。プロレスの試合ができず、応援してくれるファンの姿は目に入ってこないのに、攻撃的な誹謗中傷だけが連日寄せられる状況は苦しかったでしょう。制作側も心のケアが不十分だったことを猛省しなければなりません。

 とにかく悔やまれます。心よりご冥福をお祈りします。

KAZUYA
1988年生まれ、北海道出身。2012年、YouTubeで「KAZUYA Channel」を開設し、政治や安全保障に関する話題をほぼ毎日投稿。チャンネル登録者71万人、総視聴数は1億4千万回を超える。近著に『日本人が知っておくべき「日本国憲法」の話』(KKベストセラーズ)

週刊新潮 2020年6月11日号掲載

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