パワハラ指針、国が決めること? 思考停止を招くマニュアル信仰の害

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お上が「パワハラ」指針という愚の骨頂(2/2)

 厚労大臣の諮問機関「労働政策審議会」がこのたび発表した“パワハラ指針”に、識者たちから疑問の声が上がっている。日本労働弁護団前幹事長の棗(なつめ)一郎弁護士は、「該当しない例」を挙げたことを問題視。「使用者側に言い逃れの余地を与えることになる」と指摘している。

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 そもそも、である。

 果たして、パワハラか否かは、お上が決めるべきものなのだろうか。

「パワハラというのは、それぞれの職場でそれぞれの性格や人間関係などの文脈があって初めて判断できるものですよね」

 と言うのは、東海銀行元専務の水谷研治・名大客員教授。

「極めて複雑で、個別の案件ごとに総合的に事情を判断するしかない。しかし、それを無視して国が、これをしたらパワハラ、と単純化し、ひとくくりに決めてしまうこと自体に無理があると思います」

 個々人の価値観によっても、パワハラと感じるか否かのラインは異なるし、上司と部下の人間関係、互いに抱く感情によってもそうだ。さらに言えば、職種によっても違う。例えば、一歩間違えば生命の危機を招くような肉体労働系の職場と、デスクワークが中心の企業とでは、まったく土台が異なるのである。だから、

「ケースバイケース。それぞれの事例に即して、その都度、当事者が考えるべき問題。それを一律の指針というのは愚の骨頂です」(同)

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