結婚できない男、忖度できない女、忘れられない大人たち……今期話題のドラマに共通する「不器用」賛歌

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「自分、不器用ですから」という言葉は、かっこいいのか、開き直りか。今期ドラマで話題になったものを見てみると、人並み外れて不器用な主人公が目立つ。

 筆頭は、「まだ結婚できない男」、そのものずばりのタイトル。結婚しない、のではなく結婚できない。何かとハラスメント、と叩かれがちな時代のさなか、独身ハラスメントと言われかねないタイトルでもある。しかし人気作「結婚できない男」の後日譚ということで再び話題を集めているようだ。主演の阿部寛がクセとこだわりに満ちた、でもなんだか憎めない独身貴族を好演している。周囲を取り巻くヒロインも妙齢美人だらけ。ハイスペックに見える男の不器用ぶりこそが、共感と好感を集めているのだろう。

 同様に「同期のサクラ」も実に不器用なヒロインが主役である。忖度できない物言いと振る舞いの眼鏡っ子ヒロインに、萌えよりも息苦しさを感じる視聴者も多いことだろう。これまでは結果的にうまくいくエピソードが展開されているが、10年後のヒロインは脳挫傷で意識不明となり病室にいる。一本気なヒロインが周囲との軋轢にめげず大団円!というような、従来の頑張り女子ドラマに終わらない不穏さを感じさせる。

「モトカレマニア」も、忘れなくてはならない相手を忘れられない大人たち、と言い換えてもいいだろう。顔や年齢、年収で人を即座に判断する婚活アプリや、美男美女カップルによる投稿動画、高スペック男子に群がる女性たちのリアリティショーが流行する現代。恋愛強者たちの華やかな側面ばかりが持ち上げられる今、「そうは言ってもそんな上手く恋愛できないよ」と、キラキラ恋愛至上主義へのアンチテーゼを、笑いでくるんでいるようにも見える。

 前クールでヒットした「凪のお暇」は、一見器用な大人たちが、不器用にもがく息苦しさを描いていた。一方、今クールは「できないものはできない」と不器用さを前面に押し出した作品が多いように思う。不器用だろうがつべこべ言わずにやるんだよ、と言われ続けてきた昭和。不器用さに悩み、無力感を抱き続けた平成。でも令和は、できないことはできない。それ以上でも以下でもないけど何が悪いんだっけ?と、改めて問い直す時代なのかもしれない。

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