カサンドラは「パートナーがアスペルガーだから」ではなく「情緒的な交流がない」ことが原因で引き起こされる
「カサンドラ症候群」(以下、カサンドラ)とは、発達障害の一種・自閉スペクトラム症=ASD(旧診断基準名の「アスペルガー症候群」〈以下アスペルガー〉を含む)の夫や妻、あるいはパートナーとのコミュニケーションが上手くいかないことによって発生する心身の不調です。特に夫婦関係で多く起こると言われていますが、最近ではASDの家族や職場・友人関係などを持つ人に幅広く起こり得ることが知られています。本連載「私ってカサンドラ!?」では、カサンドラに陥ったアラフォー女性ライターが、自らの体験や当事者や医療関係者等への取材を通して、知られざるカサンドラの実態と病理を解き明かします。
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カサンドラ妻がなぜか発達障害診断テストを受ける
「白黒つけてやる!」という気持ちは、実のところ離婚調停に費やされた。
ところが調停委員とコミュニケーションをとることが全くできなかった。日々のトラブルを書き記した日記は読んでもらえず、殴られた時の診断書も話題にもされない。こちらから言い出せば嫌そうな顔をされ、それで夫が払わないと言っていた養育費の話をすれば「払わないなんて言っていない、妻は嘘つきだ」と夫が言う。気付けば私が加害者のような扱いを受けており、立場が完全に逆転していた。
調停中、あまりにも精神的に不安定な自分が怖くなった私は、藁にもすがる思いで精神科を受診した。当日だがちゃんと電話で予約もした。ところが、なぜか医者が不機嫌で「当日急にこられても迷惑だ」と怒っている。意味がわからない。きっと医者も何かにイラついていたのか、もしくは私の態度が気に入らなかったのだろうか。あるいは私の被害妄想で医者は怒ってさえいなかったのかもしれない。
けれど弱りきっている私には、事態を前向きに解釈する余裕などなかった。精神的にギリギリであることを自覚していたから病院に駆け込んだわけで、予想もしなかった展開にストレスは限界を超えた。そのため診療後、私は受付で過呼吸を起こした。
受付のソファーでヒーヒー言いながら真っ青になって倒れこむ私を抱きとめてくれたのは隣に座っていた他の患者さんだった。そのときもう目が見えていなかったのでどんな人かはわからない。
「ちょっと大丈夫ですか、ねえ、なんとかしてあげてよ!」と受付の人を呼んでくれる。けれど、受付の人は迷惑そうに「もう病院おしまいなんで、帰ってもらえませんか。帰れないなら救急車呼びますよ」と言う。息も絶え絶えに「休ませてください」と言っても「もうおしまいなんで」と苛々したように繰り返され、あっという間に救急車を呼ばれ、総合病院に救急搬送されてしまった。
過呼吸くらいで救急車に乗ったというのに、救急隊員の人はとても優しく、搬送先の病院の看護師さんも落ち着いた包容力のある年配の女性で、落ち着くまで手を握って声をかけてくれたので過呼吸はすぐ治ったのだが……。
もう自分がおかしくないとはとてもじゃないけど思えなくなっていた。
怖いと思った。
人も怖い、何をするのも怖い。
何が起こるかわからない世の中はすごく怖い。
「何をしても誰と話しても上手くいかない。私に問題があるんじゃないか。発達障害の検査をしてください!」
そんなわけで離婚が成立してすぐ、改めて精神科に、それも大人の発達障害をみてくれる病院に駆け込んだのだった。
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