平成のドラマを変えた3本といえば……ヒントは朝ドラ、クドカン、仲間由紀恵

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

Advertisement

堤以前・堤以後

●「TRICK」[2000~14年/テレ朝系]24.7%(2005年の新作スペシャル再放送の視聴率)

 深夜ドラマが当たってプライム帯(20~23時)に進出し、映画版まで大ヒット! ……という、前例のない2段階進化を遂げたのも「TRICK」。役者個人のキャラクターの面白さに頼らず、演技や演出、脚本で笑いを取る精緻なコメディーとして、ニッポンのTVドラマとして成功したのも「TRICK」。そういう脚本や演出で、それまではストレートな演技を続けてきた仲間由紀恵と阿部寛を、コメディエンヌ、コメディアンとして開眼させ、脇役から主演級のスターに育て上げたのも「TRICK」。

 メイン演出の堤幸彦は、これより前に「金田一少年の事件簿」「ケイゾク」「池袋ウエストゲートパーク」で注目株になっていたけれど、大作映画を何本も手がけるようになったのは「TRICK劇場版」以後で、演出の世界に「堤以前・堤以後」という言葉があるほど独特なスタイルが認知されたのも「TRICK」シリーズを通じて。

 今回あらためて見直してみても、ゲラゲラ笑わせられるパワーがあって、かつ、仲間の母親役の故・野際陽子がまたよく、“笑い泣き”に“追悼泣き”で二重に泣けた作品であることをご報告いたします。

●「タイガー&ドラゴン」[2005年/TBS系]16.2%

 宮藤官九郎は、ドラマの当たり外れは大きいけれど、ホンそのものの出来には当たり外れが小さい脚本家で、つまるところドラマがコケた場合、問題があるのはクドカンじゃなく企画・演出、さらには役者・観客のほう……となりがち。今年の大河の「いだてん」がまさにそんな作品になりつつありますが、あれとはまったく逆に、観客も役者も演出も企画も見事にクドカンのホンに乗ったのが、落語青春モノの「タイガー&ドラゴン」。

 脚本家の次に讃えられるべきは、「池袋ウエストゲートパーク」「木更津キャッツアイ」「マンハッタンラブストーリー」でもクドカンと組んできたTBSのプロデューサーの磯山晶だとして、もひとつ感心したのは、クドカンを信じて彼の作品に所属タレントを託し続けてきたジャニーズ事務所。あそこを褒めるような奴のドラマ評なんか読んでられるか、とお嘆きのアナタ、それは半分そのとおりながら、半分大間違い。あの事務所がウンと首を縦に振ってくれたおかげで世に出た快作は、ドラマでも舞台でもそれなりにあって、「タイガー&ドラゴン」はその代表格なんです。

 もちろん、大手事務所のゴリ押しが目立つ駄目ドラマの山の中に占めるジャニーズ系比率は低くなくて、その率は最近どんどん上昇してる気がしてならないんですが、ちょっと昔のジャニーズ事務所にはこんな功徳もあったんだよ……という平成昔話として。

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999~2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

2019年4月26日掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。