「いきなり!ステーキ」米国進出大苦戦で囁かれる“国内拡大路線”の赤信号

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NYで11店のうち7店を閉店

 共同通信は2月15日(電子版)、「『いきなり!ステーキ』米で苦戦 本場で厚い壁、6割を閉店」との記事を配信し、大きな注目を集めた。

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 記事では《ニューヨークにある11店のうち6割超に当たる7店を閉店すると発表した。残る4店のうち2店を業態転換する》と報道。

 原因として、《米国ではステーキは特別な日に食べるというイメージが強く、同社が提案した「ステーキを手軽に楽しむ」という文化は広がらなかった》と指摘した。

 朝日新聞(電子版)も同日に「NYで『いきなり』閉店 ステーキ本場で苦戦」と報じ、記事では《価格や立ち食いの手軽さといった特徴も日本ほどは浸透しなかった》と結論づけた。

 つまり、どちらの記事も「低価格帯がニューヨークの消費者に評価されなかった」と解説したわけだが、本当にそうなのだろうか。

「いきなり!ステーキ」がアメリカから撤退する可能性さえ出てきたからこそ、さらに興味深い過去記事がある。「DIAMOND online」が昨年9月3日に掲載した「『いきなり!ステーキ』の米国進出、快進撃の裏に透ける悪戦苦闘」だ。

 タイトルには「快進撃」とあるが、記事自体は、かなり厳しいトーンで書かれている。最も重要な部分を引用させていただく。

《4月に米国でチェーンに対する評価を調査した。味やサービスに問題はなかったが、客が最も不満に感じていたのが価格であった。
 肉を注文しに自分でカウンターに行く「オーダーカット」のシステムなどがあり、客にとって同店はファストフードの位置付け。それに対して価格が高いというのだ。
 6月に実施した値下げキャンペーンが大好評だったこともあり、7月からは恒状的な値下げを断行した》

 共同も朝日も「低価格帯が評価されなかった」と報じた。確かに「DIAMOND online」の記事も「客が不満を感じていたのは価格」と記載されている。確かに似ているが、意味することは全く違う。

 ニューヨークの消費者は「『いきなり!ステーキ』は安いはずなのに、割高感がある」と判断したのだ。安値が忌避されたのではなく、日本風に言えば「コスパが悪い」と不評を買ったのだろう。

 こうなると、「いきなり!ステーキ」のアメリカにおける“大苦戦”は、対岸の火事とは言えなくなってくる。国内の店舗でも値上げにより、誕生当時の“コスパ抜群”な価格設定ではなくなっている。

「いきなり!ステーキ」のオープンを伝えた記事の1つに、共同通信が13年11月に報じた「ペッパー、銀座に立食ステーキ 1グラム5円の量り売り」がある。書き出しは以下の通りだ。

《外食大手のペッパーフードサービスは25日、立食形式の新たなステーキ専門店「いきなり!ステーキ」を、12月5日に東京・銀座4丁目に出店すると発表した》

 この記事で重要なのは価格だ。まず《リブロースステーキを1グラム5円(税別)で量り売りする。ただし、当初の注文は300グラム以上で受ける》と書かれている。

 次に《ランチは300グラムのステーキセット、ハンバーグセットを各千円(同)で提供する》と紹介されている。

 要するにオープン当初、「いきなり!ステーキ」はリブロースステーキ300グラムを税抜き1500円(税別。以下同)で販売していた。だが、現在の公式サイトを見ると、1グラムは6.9円だ。300グラムは2070円。最初の価格と比較すると、値上げ率は3割を超える。

 ランチのメニューで、創業時に近い価格はハンバーグだ。共同の記事には1000円とあるが、ライス、サラダ、スープ付きで現在も1100円という価格設定になっている。

 一方、共同が書いた「ステーキセット」だが、正式名称は「CABワイルドステーキ」という。やはり、ライス、サラダ、スープが付いて300グラム1390円。記事の1000円と比較すれば、やはり値上げ率は3割を超える。経済担当記者が言う。

「『いきなり!ステーキ』は2月の13日から15日までの3日間、『出店通算400号店達成記念』とする『ワイルド祭り』を開催しました。CABワイルドステーキの300グラムを1000円で販売したんですね。ネット上では“久しぶりに『いきなり!ステーキ』で行列が復活していた”との書き込みも見受けられました。ネットに伝えられた光景が事実だとしたら、やはり『いきなり!ステーキ』が値上げで人気を落としていったことは間違いないとみていいでしょう」

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