2019年「新ルール」「新日程」トッププロもアマも「無理せず」楽しもう!

国際Foresight 2018年12月26日掲載

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暦が2019年に変わると同時に、ゴルフ界の新時代も幕を開ける。新しいゴルフルールが導入・実施される2019年は、これまでとは異なる何かがゴルフ界で見られることになるはずで、そこに期待が膨らむ一方で不安も覚える。

新しいモノやコトが始まるときは、どんな世界でも往々にして侃々諤々になる。新たに採用されるゴルフルールに対しても、いまなお賛否両論がある。

 複雑で難解な従来のゴルフルールが、2019年からは「シンプルでわかりやすいものになる」という点には誰もが「賛」を唱えている。

 たとえば、ティショットが右や左に大きく曲がり、林の中へ消えていったとき、従来のルールなら「あの林は何? OB?」などというフレーズに始まり、ボールが消えていった付近で必死にボール探しを行った挙句、ティグラウンドへ戻って打ち直すなど、時間と手間とルール上の知識が求められていた。

 その煩雑さが初心者や若者たちに「難しい」「面倒くさい」という印象を抱かせ、ゴルフ離れにつながっていた面は間違いなくあった。

 だが、新ルールの下ではOBもロストボールも対処法はみな同じ。ボールが消えていった付近のフェアウエイの脇でドロップし、2罰打を加算して4打目を打つのみ。きわめてシンプルで、わかりやすくなる。

 ボール探しの制限時間は従来の5分から3分へ短縮。ティグラウンドへ戻って打ち直す必要性もなくなるため、スロープレーの防止やプレー・ペースの改善にもつながる。

「シンプル」「わかりやすい」「時短」の一石三鳥は、新ルールの最大の利点である。

揉めずに分かりやすく

 12月上旬にバハマで開催された「ヒーロー・ワールドチャレンジ」(タイガー・ウッズ主催の米PGAツアー非公認招待試合)の2日目の18番で、ブッシュの下からボールを掻き出すように打ったウッズのショットが「ダブルヒット(2度打ち)ではないか?」とTV視聴者から指摘され、ちょっとした騒動になった。

 ハイビジョンのモニターで見れば、ダブルヒットしているように見える。だが、打った本人のウッズにダブルヒットした自覚はまったくなく、その場で見ていた他選手やキャディたちも、ウッズがダブルヒットしたとはまったく思っていなかった。

 肉眼では捉えられなかったため、ウッズのこのショットは最終的にはノーペナルティになったが、スコアカードに「6」と書くか「7」と書くかで30分以上も現場は揉めた。

 しかし、2019年からは、故意でなければ、ダブルヒットはノーペナとシンプル化され、やはり故意でなければ、自分の打球が自分のカートやゴルフバッグ、キャディ、自分自身に当たってしまった場合でも、すべてノーペナになる。

 グリーン上で「これはスパイクマーク? ボールマーク?」と首を傾げたり、揉めたりする場面は、これまではしばしば見られた。それも2019年からは、スパイクマークでもボールマークでも動物が作った穴や跡でも何マークでもリプレースOK(エアレーション=芝の育成保護のための空気孔=の跡のみ除外)という具合に、わかりやすくなる。

「楽しむ」と「魅せる」は別

 ただし、「何でも直せるということで、プレーヤーがみなあれもこれも直すようになり、逆にスロープレーを増大させるのでは?」という指摘も、すでにある。

「アンカリング(パターグリップを体の一部に固定させる打法)禁止の定義や説明が曖昧だ」と批判する選手もいる。パターグリップを手首に固定してストロークする「マット・クーチャーの打ち方はルール違反では?」と名指しで指摘する選手もいる。

「2罰打を加えれば、バンカー内のボールを拾い上げて後方外から打てる」というのは、新ルールの中でもとりわけ斬新な新規定。だが、これがメジャー大会や米ツアー大会の優勝争いの真っ只中でトッププレーヤーによって行われたら、ゴルフファンにとっては興味も興奮も半減してしまうのではないか。そんな危惧もある。

 ゴルフ初心者がバンカーショットの打ち方を学んだり、練習したりすることなく、「私はバンカーに捕まったら、常にアンプレアブル(プレイ不可能)ということにして、2ペナでバンカーから拾い出します」なんてスタイルも、今後はルール上、容認されることになる。

 それを「ゴルフというゲームへの冒涜」「あるがままで打つというゴルフの根幹を揺るがすもの」と眉をひそめる人々がいる一方で、「それでもいいじゃん、楽しめれば」と頷く人々もいる。

ちなみに、この私はどちらの側かと問われたら、私の見方は「それでもいいじゃん」の後者だ。

 そもそもゴルフは、自分の技量や力量に見合った攻め方、遊び方をするゲームだ。たとえば他のプレーヤーたちがみな池越えでグリーンを狙うときでも、「私の飛距離では、どう頑張っても池を越えられない」と思ったら、遠回りでも池を迂回しながらグリーンに近づいていけばいいわけで、「池越えで果敢に攻めなければゴルフじゃない」などと言われたら、非力なゴルファーや初心者は「ゴルフなんて全然楽しくない」と感じるだろう。

それぞれのプレーヤーに選択肢や自由があるからこそ、ゴルフは楽しい。そう考えると、バンカーにつかまったとき、2罰打を払うことでその楽しさが維持されるなら、「2ペナでバンカー脱出」はゴルフのプレーの仕方を膨らませ、遊び方のバリエーションを広げることにつながっていくからウエルカムだと私は思う。

ただし、それはアマチュアゴルファーの「楽しむゴルフ」の場合の話。トッププレーヤーたちの「見せるゴルフ」「魅せるゴルフ」では、やっぱり素晴らしい技を披露してほしいと、現段階では思っている。

ゴルフも人生も

 米プロゴルファー界の2019年は、新ルールのみならず、新スケジュールも採用され、これまで以上に短期集中型の過密日程を強いられる。

 3月に開催される“第5のメジャー”とも言われる「プレーヤーズ選手権」を皮切りに、4月は「マスターズ」、5月は「全米プロゴルフ選手権」、6月は「全米オープン」、7月は「全英オープン」という具合に、メジャー級の大会が毎月1つずつ行われ、その合間に米ツアーの大会がぎっしり組み込まれている。

 レギュラーシーズン終了時点でのポイントランク上位10名にボーナスが支給される「ウィンダムリワード・トップ10」という新たなポイントレースが新設されるため、選手たちは過密日程の中から出たい大会を選んで出るというよりは、過密日程の中でも最大限試合に出場し、1つでも多くポイントを稼ぎ、そしてボーナスを稼ごうと挑むことになる。

 レギュラーシーズン終了後は、プレーオフ3試合が行われる。最終勝者である年間王者に贈られるビッグボーナスは、これまでの10ミリオン(1000万ドル=約11億円)から、2019年は一気に15ミリオン(1500万ドル=約16億円)へ大幅アップされ、2位以下の選手たちに贈られるボーナス総額も、25ミリオンから60ミリオンへ大幅増額される。

 そんなふうに、2019年の米ゴルフ界には戦いの舞台も希望もお金も溢れ返っており、興行ビジネスとしての不安要素、ネガティブ要素はほとんど見当たらないと言っても過言ではない。

 プロゴルファーは稼いでナンボ。賞金であれ、ボーナスであれ、彼らにとって、ビッグマネーは何より大きなモチベーションになる。

だが、ビッグマネーがかかっているからこそ、無理をする選手が増えるだろうとも思う。スイングで無理をする人、攻め方で無理をする人、肉体的に無理をする人、精神的に無理をする人、スケジューリングで無理をする人。

その結果、さまざまな「無理」が心身の傷病やゴルフの不調、お金では買い戻せない不測の事態を招くことも考えられる。

だからこそ、トッププレーヤーたちには慎重な姿勢と、戦いを楽しむぐらいの心の余裕を持っていてほしい。

アマチュアゴルファーが無理せず2ペナを払ってバンカーから脱出するのだとしたら、トッププレーヤーたちには2ペナ相当の欠場や休養をあえて取り、バンカーならぬ人生の「落とし穴」に落ちないよう、十分に気を付けてほしいのだ。

たくさんの事柄が大量に溢れ返り、スピーディーに流れていく時代だからこそ、「無理せず、楽しむ」――ゴルフも人生も、2019年はそんな1年になってほしいと願う。

舩越園子
在米ゴルフジャーナリスト。1993年に渡米し、米ツアー選手や関係者たちと直に接しながらの取材を重ねてきた唯一の日本人ゴルフジャーナリスト。長年の取材実績と独特の表現力で、ユニークなアングルから米国ゴルフの本質を語る。ツアー選手たちからの信頼も厚く、人間模様や心情から選手像を浮かび上がらせる人物の取材、独特の表現方法に定評がある。『 がんと命とセックスと医者』(幻冬舎ルネッサンス)、『タイガー・ウッズの不可能を可能にする「5ステップ・ドリル.』(講談社)、『転身!―デパガからゴルフジャーナリストへ』(文芸社)、『ペイン!―20世紀最後のプロゴルファー』(ゴルフダイジェスト社)、『ザ・タイガーマジック』(同)、『ザ タイガー・ウッズ ウェイ』(同)など著書多数。