「防衛大綱」に盛り込まれる深刻な自衛隊員不足 特に敬遠される海上自衛隊

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今の若者は興味が違う

 現在、募集相談員を務めている元自衛官も言う。

「やはり少子化と景気の良さが、志願者減少に影響しています。民間でも売り手市場の今は、敢えて自衛隊に入ろうという若者は減るものです。高学歴社会となり、中卒、高卒で入ろうという者も少なくなっています。それに若者の気持ちというのかなあ、彼らの興味は我々の時代とは違うんですよ」

 かつて自衛隊員になる魅力のひとつと言えば、免許の取得だったが、

「今の若者は、免許の取得に魅力を感じない子が多い。普通自動車免許のみならず、大型自動車免許やヘリコプター、パイロットなどの操縦資格、戦車を運転するための特殊免許……、様々な免許が自衛隊内で取得できるのですが、将来、役立つとか、そういったことは考えないようです。むしろ、メールやSNSで外部との通信が自由にできないことが敬遠されます。特に海上自衛隊は、演習で何ヶ月も遠洋航海に出ることがあるが、陸が見えなくなれば携帯電話やスマホなどつながりません。現在は、私用メールは艦内のサーバーに貯め、定期的に衛星通信で送信するようになりました。それでも、何ヶ月も航海に出るため、人気がないんです。地元にいたいので、転勤も嫌がるくらいですから。我々の頃は加山雄三さん(81)など、“海の男”という憧れがいたものですが……今は男のロマンなんて通じません」

 隊員募集業務を委嘱された相談員が何をするかと言えば、

「様々なPR活動に努めています。でも高校に自衛隊の音楽隊を連れて行こうにも、『施設内で演奏するな』とか『制服で来るな』と言われることもあります。ごくごく一部の声だと思いますが、今はクレーム社会。そうした声が上がると、学校も無視できませんからね。ですから、ポスターにアニメを使ってみたり、SNSで広報活動をしてみたり、いろいろとやってはいます。ドラマや映画でヒットした『海猿』で海上保安庁への志願者が急増したように、そういった作品もできればいいのですが……」

 もっとも、東日本大震災での自衛隊員の活躍で志願者が増えたとの報道もあった。

「東北では今も志願者は比較的多いと聞きます。関西でも阪神・淡路大震災のあとは志願者が増えましたが、そればかりを頼りにするわけにもいきませんからね。結局は、やりがい、日本に必要であること、真の魅力を愚直に説明するしかないんです」(同・相談員)

 待遇についてはどうか。

「たしかに給料は恵まれていないところもありますが、それは我々ではどうしようもないし、すぐに改善できる話でもない。せめて、自衛官に誇りを持てるようにできないかとは考えることはあります。憲法に明記されることも結構ですが、欧州の軍人であれば、公共の交通機関が半額であったり、美術館は無料ということもある。細かいことかもしれませんが、そうしたことは現役の隊員にとっては『感謝されている』と実感でき、名誉に感じると思います」(同・相談員)

 自衛隊を外国人労働者に任せるわけにはいかないのだ。

週刊新潮WEB取材班

2018年12月17日掲載

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