石田ゆり子“インスタ疲れ”発言と見え隠れするたくましさ

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 石田ゆり子、48歳。少女的とも思える透明感と鈴を転がすような声。動物好きな優しさと、芯の強さをあわせ持つ女性。わたしは彼女を見ると「風の谷のナウシカ」のナウシカを思い出す。原作実写化が流行りの昨今、心の「ナウシカ候補No.1」として勝手に推薦したいくらいである。今の髪型含めあの青い服も似合いそうだ。そんなジブリヒロインのような彼女が、最近インスタ疲れを訴えている。

 本人のおっとりとしたキャラクターもさることながら、愛犬や愛猫たちの出てくる投稿には多くのファンがついていた。すぐ炎上するSNS戦国時代において、むしろとても巧い戦い方をしている一人と言っていいくらいである。更新されるのは本当につつましい日々の出来事で、男性の影などおろか、著名芸能人との交遊関係すらほとんど見えない。要はケチをつけることの方が難しいくらいの内容だった。ちなみにケチをつけられたのは、ニュースにもなったが服飾店での店員の対応に関する感想や、動物の飼い方についてだったという。

 おそらく、石田と石田のインスタ疲れを引き起こす人々の大きな差は、インスタというものに対する認識の違いにある。石田はおそらく、“公開日記”くらいのスタンスだったのではないか。見ている人がニコッと笑ってくれるようなものがいい、とフジテレビ系TV番組「ボクらの時代」で語っていた。きょうこんなことがあって、私はこう思いました、で本来は完結するものだ。

 一方、 “採点用紙”だと思っている人たちがいる。世間に発表する以上、笑える・笑えないという曖昧な基準でなく、正しいか正しくないかが最も優先されるのだと信じる人たち。でも本質は、自分の声を誰かに聞いてほしい、自分には価値があると信じたいという切実な気分を、正しさや正義感に包んでいる部分もあるように思える。他人の日記に赤字を入れるのはおかしいけれど、採点用紙と思えばいくらでも赤が入れられる。そんな形で自身の存在意義を見出し、呼ばれてもいないのに出張採点にいそしむ。

 こうした出張採点人たちと石田のファンがコメント欄で応戦しあう場外乱闘も起きていると聞く。いくら生けるナウシカ・石田と言えど、真面目に消火活動をし続けるのも、そりゃあ疲れることだろう。森へお帰り、と言いたい気持ちではないだろうか。

石田ゆり子の意外な肝の太さと炎上対策

 ところで、石田は先日出演した「サワコの朝」「ボクらの時代」「ぴったんこカン・カン」で、人と一緒にいると疲れてしまう、と明かしていた。結婚をしてみたい気持ちがあるのに問題だけど、という自嘲をこめての発言である。会話で説明するのが苦手なぶん、文章にすると客観的になれるので、話すより書くことの方が性に合う。だからインスタは自分に合っていると語っていた。
 勝手に深読みするならば、インスタを続けたい嘆願にも思える。実生活でなかなか思ったことをうまく口に出せないから、せめてインスタという逃げ場所くらいは残しておいてくれというSOS。

 人と一緒にいると気疲れしてしまうのは、現代なら特に多くの人が抱えている悩みではないか。相手の反応が気になるからこそ生じる苦しみであり、繊細で気配りのできる人だという裏返しでもある。まさにSNSの台頭でより深刻化したストレスだ。でも一方で、「人と一緒にいると疲れる」と公の場で表すのはけっこう肝が太いとも感じる。なぜなら必然的に、周囲に少なからず動揺と気づかいを生じさせるからだ。(私的な場なら、「実は私もなの!」と親近感を抱かせる場合もあるが)。事実「ぴったんこカン・カン」で古田新太と藤井隆の飲み会に呼ばれた時、いかにも早く帰りたそうな素振りを見せる石田に対し、藤井が懸命に盛り上げ場をもたせていたのが印象的だった。にこやかに登場しつつも、参ったなあ、という成分が見え隠れする笑顔や、古田のおすすめ料理に対する薄いリアクション、そして中座してほっとする表情を見た時、ああ、本当に人といるのが苦手な人なんだな、としみじみ感じたものである。

 現実の人間関係のわずらわしさから逃げて見つけたインスタの世界。それは彼女も出演したヒット作「逃げるは恥だが役に立つ」の題名通り、気持ちを安定させる役に立っているのだろう。だからこそ疲れた、とあきらめず、どうかその場所を守り通してほしい。というか本来持っている肝の太さを、インスタでこそ自由に爆発させてもいいくらいではないか。文章も失礼、写真もなってないと攻撃してくる者どもに対し、じゃあモールス信号で発信します!くらいのおちょくりを見せてほしいものだ。と、いうのはさすがに冗談が過ぎるかもしれない。でも稀代のナウシカ女優ならば、自分に刃向う相手にすら「おびえていたんだね。でももう大丈夫だよ」といなす度量の広ささえ見せてくれるのではないか、と勝手に期待している次第である。

(冨士海ネコ)

2018年9月28日掲載

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