1億円の“バラマキ”が「村営キャバレー」、「謎のモニュメント」に?! “ふるさと創生”を教訓に石破茂氏はこう考える

政治2017年4月21日掲載

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■地方創生はバラマキか

青森県西津軽郡木造町(現在のつがる市)の木造駅正面には「巨大土偶」
Wikimedia Commons/WP:Ja user Bakkai/File:Kizukuri_Station.jpg

「1億円差し上げます。何らかの形で将来に役立つように使い切ってください」
 こんな風に言われて、現金をポンと差し出されたらどうするだろうか。
 マイホームを建てる、車を買う、子供の教育資金にする……そんな真っ当な使い方を考える人もいるだろうが、一方で、手堅い馬券を買う、キャバクラで使いまくる等々、本当に将来に役立つのか怪しい使い方をする人もいるかもしれない。

 これを実際に全国規模で、地方自治体を対象に行ったのが、1980年代末、竹下登内閣での「ふるさと創生事業」だろう。
 全国の自治体に、自由に使ってよいということで1億円を交付したこの政策は、実施当初から「バラマキだ」という批判が根強かった。というのも、真面目な事業に使ったり、貯金したりした自治体ばかりではなかったからだ。
 使いみちに困ってしまい、効果のよくわからないモニュメントに使う自治体も珍しくはなかった。当時話題になった、個性あふれる使いみちをいくつかあげると……。

・秋田県仙北郡仙南村(現在の美郷町)では「フォーラムハウス」という名目の「村営キャバレー」
・青森県上北郡百石町(現在のおいらせ町)では緯度がニューヨークと同じという理由で「自由の女神像」
・青森県西津軽郡木造町(現在のつがる市)の木造駅正面には「巨大土偶」
・兵庫県津名郡津名町(現在の淡路市)では手で触れられる「金の延べ棒」
・北海道奥尻郡奥尻町では特産のウニをイメージした「うにまるモニュメント」

 この時の悪いイメージからか、現在、安倍政権下で行われている「地方創生」についても、「バラマキの再来では」といった見方をする向きもいる。

結局のところ、重要なのは「自由なお金があるかどうか」ではありません。「自由なお金をどのように使うのか」なのです

 この点について、初代地方創生大臣をつとめた石破茂氏は、新著『日本列島創生論』の中で、竹下総理との秘話も交えてこう語っている。(以下、引用は同書より)

「自治体の方々にお目にかかると、
『自由に使える金がたくさんあれば、地方はいくらでも良くなるよ』
 といった声を聞くことがあります。
 国が出す補助金はヒモ付きばかりで、自由に使えない。だから地方はやりたいことがやれない。それで地方自治も何もあったものではないじゃないか。もっとどかんとお金を渡してくれれば、いくらでも試してみることがあるのに――。
 私はこのような意見を決して否定はしません。一面の真理が含まれていると思います。が、すべてがすべて仰る通りかといえば、そうでもないと思うのです。
 実際に、そのような『自由なお金』を自治体に交付した有名な例が、『ふるさと創生事業』のために、竹下内閣が全国の市町村に交付した1億円です。これについては、バラまきの典型だという批判が当時からありました。

 それについて竹下総理にお尋ねをしたら、こんな答えが返ってきました。
『石破、それは違うんだわね。これによってその地域の知恵と力がわかるんだわね』
 この言葉は鮮明に覚えています」

 しかし実際には上にあげたように、とんでもない使い方をした地域も少なくない。

「“独特”の使い方を上から目線で断罪するつもりはありません。たとえ突飛に見えても、それが本当に地方のためになったのならば結構な話です。しかし、(略)本当にゴーサインを出すべき使い方だったかといえば、疑問が残ります」

■役所にお任せではチェックできない

 もっとも、竹下総理が言う通り、実際には「知恵と力」で有効に活用した自治体も存在はしたのだという。地元の歴史研究など文化事業や、教員の人材育成に投資した地域もあり、それらは地味ではあるが、有効な活用法だとも言えるという。

「興味のある方は、『ふるさと創生事業』でネット検索をなさってみてください。各地方の主な使途が並んでいます。『こんなくだらないことに』というものもあれば、今も残っているもの、私たちに馴染みのあるものも多くあります。
 結局のところ、重要なのは『自由なお金があるかどうか』ではありません。『自由なお金をどのように使うのか』なのです。その良し悪しはそれぞれの地方で判断すべきです。
 予算の使い方について、地域がチェックするシステムが内蔵されていなければ、バラマキだという批判は常につきまとうでしょう」

 こうしたチェックは、地方自治体では住民が意識的に行う必要がある。「役所にお任せ」のままでは、さすがにキャバレーは作らないにしても、行政側は十年一日のごとく、無駄なハコモノを作ってしまいかねないからだ。
 住民が目を光らせていれば、役所も「巨大●●」のようなものに、貴重な税金をつぎ込むこともなくなってくる。石破氏は『日本列島創生論』の中で、地方が本当に創生するためには、住民がそのような「お任せ民主主義」と決別する必要がある、と指摘している。

デイリー新潮編集部