孫を30歳まで支援できる「贈与信託」とは

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 児孫のためにどう資産を活用するか――今注目されているのが、“教育資金贈与信託”。2013年4月に導入の“教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置”に伴い誕生した新しい商品である。信託協会の調べでは、今年9月末段階での累計契約数が約14万1600件、信託財産設定額は9600億円超で、近年の信託商品の中では最大のヒットと言っていいほどの人気ぶりがうかがえる。

「1700兆円あるとされる日本の個人金融資産が相続で次世代に移転すると、それは資産のまま塩漬けになる可能性が高い。この非課税措置は、資産の早期移転を促すと同時に、個人資産の多い祖父母世代に、孫のためにお金を使ってもらって、資金の流動化を促したいという政府の目論見もあるようです」(経済ジャーナリスト)

 そんな非課税措置を、“教育資金贈与信託”の中身と絡めながら説明しよう。例えば、〈孫への想い〉という愛称の、三井住友信託銀行の商品はこうだ。

「贈与する祖父母などの委託者が、受託者である当行の教育資金贈与信託にお預入れをします。その通帳の名義は、受益者である0歳以上30歳未満のお孫さんなど。申込金額は5000円以上1500万円以下です。この1500万円が、教育資金一括贈与の非課税限度額になります」(三井住友信託銀行)

 預入れ時に、贈与を受ける側は“教育資金非課税申告書”を信託銀行経由で税務署に提出する。

「お預かりした信託資産の運用益から運用報酬をいただくので、口座管理手数料や払出手数料などを直接お支払いいただくことは一切ありません」(同)

■使い切ることが重要です

 大事なのはここからだ。贈与したのは“資金”だから使わねばならず、しかも用途は限られているのだ。

「まず、入学金や入園料、授業料、学用品、教科書代、修学旅行費用など、学校関係の費用。また500万円を限度として、ピアノや水泳といった習い事や、塾や予備校の費用にもお使いいただけます」(同)

 支出が発生したら、領収書と払出請求書を提出。すると信託財産の中から、受益者名義の銀行口座等に領収書分の金額が支払われる。

「受益者のお孫さんなどが30歳になって信託が終了する際、財産の使い残しに対して贈与税が課税されることになります」(同)

“教育のために”使い切らなければならないのだ。

 ならば、贈与税の通常の非課税枠である年間110万円を利用した方がいいと考えることもできるが、

「普通の贈与ですと用途制限がありません。お客様からは“信託の方が使い道がはっきりしていい”との声をいただいています」(同)

 さらに今年4月から、“結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置”も始まった。仕組みは、受益者が20歳以上50歳未満であること。非課税限度額は1000万円。資金用途は不妊治療や出産費用、生まれた子供の医療費など。また300万円を限度として、婚礼費用や夫婦の新居費用、引越し費用などだ。

「こちらの信託は受益者が50歳で終了します。使い残しがあった場合、贈与税の課税対象となるのは教育資金と同じですが、途中で委託者が亡くなった場合、信託資産の残額は相続税の課税対象になります。これが教育資金と違います」(同)

 このふたつの信託を活用すれば、こんな贈与のあり方も可能だ。例えば夫婦が、20代の息子のために結婚・子育て支援信託を設定する。結婚費用、出産費用はここから支出。そして孫が生まれたら教育資金贈与信託で、教育資金の面倒を見る。次世代のために、最大2500万円の資金援助が非課税でできるのである。

「ただし、教育資金贈与非課税も結婚・子育て贈与非課税も2019年3月まで、ということにご注意を」(先のジャーナリスト)

 税金対策より何より、子や孫の将来を真剣に案じる向きにとってはピッタリの商品かも――。

週刊新潮 2015年12月3日号掲載