「一億総活躍社会」なんのこっちゃ――小田嶋隆(コラムニスト・テクニカルライター)
「一億総白痴化」という1957年に大宅壮一が放った流行語は、既に死語だ。理由は、われわれが白痴化しなかったからではない。総白痴化過程は、むしろほぼ完了しているのかもしれない。この言葉が死語になった事情は、白痴化という現象とは別の局面の話だ。
「一億総白痴化」という言葉が、事実上使用不能な状況に陥っているのは、われら一億が総偽善化したからだ。わたくしどものこの21世紀のちいちいぱっぱ社会では、過度に率直な言葉は使えない。「白痴」も、活字メディアではともかく、テレビではまず発音できない。...