「圏央道」10.8キロ開通で「陣取り合戦」に舞うカネ

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 クルマで走れば10分足らずの僅かな距離でも、この10・8キロが開通した意義は果てしなく大きい。

 東名、中央、関越の主要高速道路を結ぶ圏央道が、10月31日に埼玉県内で全通となった。桶川北本インター(IC)と白岡菖蒲ICが結ばれたことで、神奈川県にある東名の海老名ジャンクション(JCT)から埼玉県の東北道・久喜白岡JCTへは、都心を経由する必要がなくなった。所要時間も55分短縮の75分となり、関西から東北へのアクセスがスムーズになったのだ。

 だが、新規開通区間の写真を見れば、ご覧のとおり“ダサいたま”なんて揶揄されるような田園地帯が広がる。今までなら素通りされるところに、今や圏央道から半径5キロ以内の土地は、様々な企業が札束を握りしめ、我先にと殺到するエリアとなっている。

「県として造成した産業団地は4つですが、うち2つは23社に売れて、造成中の2つのうち1つも予約でほぼ埋まりつつあります」

 と胸を張るのは、県産業労働部の担当者。新たに進出して雇用を生み出す企業には、補助金や許認可の優遇措置でバックアップする体制をとっているという。

 実際、大阪に本社のある江崎グリコは、4年前に関東初の工場を圏央道の桶川加納IC付近に設けた。同じ時期に、建材大手のYKK APも工場を建設。一昨年はキッコーマンの工場も操業を開始している。家具量販店を展開するニトリも、3年後に物流センターを稼働させる予定で、企業の進出ラッシュが止まらない。

「上田清司知事からは“補助金で胡坐をかくな。汗をかけ”と言われてますので、職員は年1500社を目標に、1日2、3社のペースで企業訪問を続けています。11月27日には大阪で説明会も開く予定です」(同)

 なんでもお値段は、一坪15万円前後が相場だとか。そう教えてくれるのは、地元の不動産関係者だ。

「埼玉でも外環道より南、川口や戸田だと坪100万円を超えるし、圏央道沿線の神奈川エリアでも坪20万は下らない。それらに比べればお得感があるよ」

 県は地元金融機関や不動産業者と連携し、空いた土地を探して造成を続けていくという。埼玉は、久々の“土地神話”に沸いている。

週刊新潮 2015年11月12日号掲載

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