いつから被害者の仮面をかぶった「佐野研二郎」が語るべき言葉

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 誹諦中傷、人間として耐えられない限界状況……。エンブレムの使用中止が決まった日の夜、佐野氏が経営する会社のHP上で発表したコメントに連ねられている文言だが、おいおい、ちょっと待ってくれ。紛うかたなき騒動の張本人が一体なにゆえ、被害者の仮面をかぶっているのか。

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5年後に控えた東京五輪の「序曲」は、耳を塞ぎたくなるような不協和音にかき消されつつある

 ご記憶の方も多いかもしれないが、佐野氏の「弁明」に我々が驚かされるのは今回が初めてではない。

 エンブレムが発表された後、佐野氏が手掛けたトートバッグに「盗作疑惑」が浮上。結局、30点のうち8点を取り下げざるを得なくなり、その際にも彼は会社のHP上でコメントを発表したが、そこにはこうある。

〈デザイナーにデザインや素材を作成してもらい、私の指示に基づいてラフデザインを含めて、約60個のデザインをレイアウトする作業を行ってもらいました。その一連の過程においてスタッフの者から特に報告がなかったこともあり、私としては渡されたデザインが第三者のデザインをトレースしていたものとは想像すらしていませんでした〉

 自分は被害者、とでも言いたげな内容なのだが、

「スタッフがやったこととはいえ、管理が行き届いていないのは、佐野さんのマネジメントに問題があったと思います」

 と、指摘をするのは「宣伝会議」編集室長の田中里沙氏。

「たとえ部下が上げてきたデザインであっても細心の注意を払って、誰の絵をモチーフにしたかといったことを尋ねるのが普通です」

■汚名と向き合え

 エンブレム使用中止が決まった後に発表されたコメントには、こうある。

〈私自身や作品への疑義に対して繰り返される批判やバッシングから、家族やスタッフを守る為にも、もうこれ以上今の状況を続けることは難しいと判断し、今回の取り下げに関して私自身も決断致しました〉

 相次いで作品に疑義が呈される事態を招いた責任をとって取り下げを決断した、というなら分かる。が、そうではなく、バッシングから家族やスタッフを守ることが目的だというのだ。

 先の田中氏が言う。

「確かに佐野さんのコメントからは被害者意識のようなものが感じられますが、背景には、デザインの修正に応じたことへの忸怩(じくじ)たる思いがあるのかもしれません。そもそも、8月5日に記者会見した際は修正の事実すら明かしませんでした。そうしたことも含めた一連の経緯について、佐野さんは表に出てきてきちんと話しても良いのでは……」

 被害者面して「パクリのサノケン」という汚名から逃げ出すのではなく、しっかり向き合うべし。

【特集】「『五輪序曲』不協和音の演奏者」より

週刊新潮 2015年9月17日号掲載

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