大企業が「ホワイト認定」申請に二の足を踏む理由

企業・業界週刊新潮 2015年9月3号掲載

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 大学4年生の多くは、就職活動の真っただ中である。炎天下にリクルートスーツを着る彼らの望みは“内定”に他ならないが、同時に将来の職場が“ブラックだったら”という不安も抱いているはず。一方、採用側の企業は学生たちの評価に気を揉んでいるものの、“ホワイト企業”認定の申請に二の足を踏んでいるのはなぜか。

 目下、企業が恐れている組織の1つに通称「かとく」がある。正式名称は、厚生労働省過重労働撲滅特別対策班だ。経済部記者の解説では、

「『かとく』は4月に発足したばかりの組織で、ベテランの労働基準監督官を東京に7人、大阪に6人配置しています。目的は、社員に過重労働などを強いるブラック企業の摘発。その一方で、厚労省は“ホワイト企業”の認定制度をスタートさせました」

 厚労省が6月に新設したのは「安全衛生優良企業公表制度」。規定のチェック項目を8割クリアして書類を申請後、厚労省の審査を経て“ホワイト企業”と認定される。加えて、その証である「優良企業認定マーク」を3年間自由に使用できるという。いかにも、大企業が飛びつきそうだが、

「この2カ月間で、“優良”と認定されたのは岐阜県の部品メーカー『パジェロ製造』と、鳥取県の建設業『やまこう建設』の2社だけです」

 こう語るのは、厚労省労働基準局安全衛生部の担当者だ。

「大企業からも相談はありますが、まだ申請自体はありませんね。大企業では多かれ少なかれ、過去に労務関係で法令違反があった。それで及び腰になっているのでしょう」

 大手飲料メーカーの役員が、苦笑しながらこう語る。

「ホワイト企業に認定されれば、企業イメージは間違いなくアップする。ですが、いくら注意しても、工場などでは“問題”が起きてしまう。『優良マーク』取得後、何か起きたら“あのホワイト企業が”と、必要以上にバッシングされるのが怖くて……」

 ブラックは困るが、今はグレーのままでいい。それが大企業の本音なのだ。