幻想・怪奇文学クロニクル/『幻島はるかなり 推理・幻想文学の七十年』

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「時代精神というものは、案外埋もれやすい雑著の中からも見出すことができるのではなかろうか」

 そう書く著者は、出版文化史の第一人者でありながら、厳しい父親の目を逃れて蔵にこもり、カビのにおいにとりまかれて古い雑誌に読みふけった子どものころのわくわくする気持ちをいつまでも忘れない人だ。ここで紹介される本の多くも「雑著」に分類されるようなもので、真ん中よりは周辺に近い場所から、その時代の息づかいを照らし出す。

 一九三五年、横浜に生まれた著者は、幼時から本に親しんできた。...

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