伏せられた自由を解読する/『伏字の文化史―検閲・文学・出版』

文芸・マンガ

 家に残されていた戦前の文庫本を読んだ時、至る所に散在する、本来あるべき文字に置き換えられた×や○の存在に強い印象を受けたことがある。本書は、この「伏字」の意義や役割、影響などを文化史的、実証的に追求した労作である。

 著者が注目したのは、大正六年頃から運用が本格化する「内閲」と呼ばれる日本独自の検閲制度。これは出版物の発行者が、原稿やゲラの段階で、内務省の検閲官に閲覧を請い、指摘された問題箇所を手直しし発売禁止処分を回避せんとする制度である。これは法令で定められた訳ではなくあくまでも便宜的な措置だった。

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