正直な奇人の愉快な自伝/『奇想の発見―ある美術史家の回想―』

アート

 伊藤若冲、曾我蕭白といった日本美術史の中で埋もれていた画家たちに、「奇想」をキーワードに光を当てた美術史家の自伝である。「奇想」が代名詞となった人の、なまなかではない「奇人」ぶりがこの本の読ませどころだ。

 功成り名遂げた人の伝記には紆余曲折、失敗談がつきものだが、たいていは若き日の過ち、成功物語のスパイス程度におさめられる。著者の場合は、生涯を通しての「呆れた」「困った」「失敗した」エピソードがちりばめられているので、その迫力に圧倒される。

 もの忘れ、といったかわいい失敗もあれば、指導していた女性に猛アプローチをかけて相手の父親に抗議され、あやうく就職を棒にふりそうになったこと、東大定年後にどこからも声がかからず、国際日本文化研究センターに自分からプロポーズして職を得たこと、その後、学長になった美大で二期目に立候補して落選したこと、などなど、並の学者なら避けて通りたい暗黒の歴史がばんばん出てくる。

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