運命の悲劇に翻弄された異能の天才/『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯』

文芸・マンガ

 あのボビー・フィッシャーが日本にいると知ったのは十年前の朝日新聞だった。「王」と題されたその記事は、フィッシャーが東京のチェスクラブにふらりと現れたというもので、一九九二年、国連制裁下にあったユーゴスラビアでチェスの対局を行い、アメリカ政府から訴追されていると書かれていた。ジョージ・スタイナーの傑作ルポルタージュ『白夜のチェス戦争』や映画「ボビー・フィッシャーを探して」を通して天才棋士フィッシャーの名前は知っていたので、奇行を繰り返したあげく忽然と人前から姿を消した伝説の人物が日本にいると伝える原稿は強く印象に残った。

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