得意の“謝罪要求”をしない朝日新聞 広島訪問でオバマ大統領がすべきこと

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オバマ米大統領

 5月27日に行われるオバマ米大統領(54)の広島訪問は、ノーベル平和賞を受賞した大統領が検討し続けていたものだという。しかし、「平和記念公園内の『死没者慰霊碑』への献花、『平和記念資料館』の参観、あとは『原爆ドーム』を訪れるかどうかといったところ」と外務省の関係者は語り、日米両国首脳のイメージアップに、被爆地が「舞台装置」として使われるのがオチだという。

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 それがわかっているにもかかわらず、

〈安全な未来への一歩に〉(朝日社説)

〈訪問の英断を評価する〉(毎日社説)

〈核廃絶 日米が発信〉(読売)

〈核なき世界へ同盟貢献〉(産経)

 などと“両翼”とも主要紙はおしなべて、今回の訪問を手放しで誉めそやす。オバマは広島で何をなすべきなのか。

数多の霊はオバマを歓迎するのか?

■摩訶不思議な朝日新聞の価値判断基準

「日本人は、謝罪しないくらいならオバマは広島を訪問しなくてよいと言わなければいけないと思います」

 と言うのは、京都大学の中西輝政名誉教授(国際政治学)である。

「来てくれて良かったという歓迎ムードだけでは、日本は何が起きても謝罪を要求しない国と受け止められてしまう。謝罪要求の声すら上げないのでは、日本には何をやっても謝る必要はないという印象を植え付けてしまう。国際関係というのは、正しいことは正しい、間違いは間違いと率直にものを言ってこそ築くことができる。黙っていては、日本は原爆投下が不当だったという思いもないのだと多くの国は見てしまうのです」

 しかし、日本の各紙を捲っても、謝罪を要求しているところは皆無だし、責任を論じる観点もない。

 例えば、朝日新聞は、中国、韓国との関係では、日本政府に戦争の責任を追及し、負わせんとする主張が喧しい。既に、日本が何度も謝罪しているにもかかわらず、である。一方で、アメリカに対しては、原爆のそれを追及する手は弱い。アメリカが一度も謝罪していないにもかかわらず、だ。

 当の朝日に聞くと、

「謝罪を求める被爆者の声については社会面などで伝えています」

 と答えるけれど、実に摩訶不思議な価値判断基準をお持ちのようなのである。

■識者が語る“すべきこと”

 とは言え、国際政治の舞台で、歴史問題は重要な外交カード。現実的には、謝罪実現のハードルが極めて高いことは否めない。

 早稲田大学社会科学部の有馬哲夫教授(メディア研究)は言う。

「オバマに突きつけたいのは、どうして原爆を落とさないで日本を降伏させる選択肢を取らなかったのか、ということ。その理由を説明する責任はあるでしょう」

 また、カリフォルニア大学サンタバーバラ校歴史学部の長谷川毅教授(ロシア史)も言うのだ。

「原爆の犠牲者に日系アメリカ人やアメリカ兵の捕虜が含まれていたことを、公表してほしい。このことは最近一部の専門家が明らかにしていますが、一般には知られていないのです」

 原爆の犠牲者に自国民もいたという事実は、アメリカに原爆投下正当論を再検討させるきっかけを与えるかもしれないのだ。

■張本勲氏、大下英治氏は…

「アメリカのやったことは絶対に許すことは出来ません。この身が朽ちる時まで、何があっても許すことは出来ないんです」

 と語るのは、「3000本安打」の野球評論家・張本勲氏である。張本氏は5歳の時に広島で被爆し、姉を失っている。

「それでも、やった側の代表が初めて広島の地を踏んでくれて、本当にホッとした気持ちです。戦争は喧嘩だから謝ることは出来ないだろうけど、絶対に資料館であの“服”を見てほしい。あそこには、女の子用の小さな洋服が展示されている。3歳か4歳の子のものかと思っていたら、高校生の洋服だった。洋服もこんなに縮んでしまうのか、と胸を打たれました。ぜひ大統領にはあれを見てほしい」

 広島出身の作家・大下英治氏は、原爆投下当時1歳。母の背中で被爆し、父は全身火傷で亡くなった。

「大統領には、被爆者の話を直接聞いてほしい。資料館も行くべきですが、あそこにあるのは“死者の記録”。それに加えて、地獄を背負って生き延びてきた人たちの言葉を、生で聞いてほしいのです。そのためには広島を少し見て、僅かなスピーチをして帰るのではなく、もっとじっくり留まってあの地の声を聞いてほしい。決してショーで終わらせてはいけないのです」

 果たして、5月27日、オバマはこうした“声”に耐えられるのか。現在の覚悟を鑑みるに、高邁な精神を語ったところで、広島の歴史の重みに埋没し、空虚な理想として、人々の耳から耳へ通り過ぎていくように思えてならないのである。

「特集 『ケネディ大使』は『オバマ切腹せよ』の世論を心配? 謝罪要求は十八番なのに『朝日新聞』はなぜダンマリ?『オバマ大統領』が広島でやるべきこと」より

週刊新潮 2016年5月26日号掲載

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