モンスターマザーその手口 マスコミ、人権派弁護士、精神科医を取り込んで 〈学校を破壊するモンスターマザーの傾向と対策(3)〉

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モンスターマザー 長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い』(新潮社刊)の著者、福田ますみさんが、学校を破壊する怪物の“傾向と対策”を伝授する。これまで紹介してきたのは、丸子実業高校(現・丸子修学館高校)1年生の高山裕太君(16)が2005年に首つり自殺をした事件の、母・高山さおり(仮)の“すさまじさ”である。事件前に裕太君が家出した際には、担任教師や学校関係者を激しく罵倒。裕太君が所属していたバレー部の先輩生徒や監督、その家族にまで度を超えた抗議を行った“モンスター”である。事件後には校長を裕太君殺害容疑で告訴し、長野県、校長、先輩生徒とその両親を相手に1億円超の損害賠償を求める民事訴訟を起こすという、前代未聞の行動にも出た。しかしその結果は、校長は不起訴となり、長野地裁は学校側の責任を完全に否定。反対に、“原告の態度が裕太君のストレスになった”と、さおりの責任を示唆する判決が下ることとなった。

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 実は私は、高山さおりに匹敵するもうひとりのモンスターマザーを知っている。

 03年5月、福岡市の公立小学校の教諭がいじめや体罰、自殺強要を行って、教え子の9歳の男児をPTSD(心的外傷後ストレス障害)に罹患させたとして、マスコミから猛烈なバッシングを浴びた事件がある。教師には停職6カ月の処分が下された。

 当時の報道によれば、この教師は、男児の髪が赤みがかっていることに目をつけ、「穢れた血が入っている」「生きている価値がない。自分で死ね」などと述べ、鼻をつかんで身体を振り回したり、耳をつかんで乱暴に上に引っ張り上げたりもした。これが事実なら、「史上最悪の殺人教師」と報じられたのもやむをえない。

 しかし、13年1月、福岡市人事委員会は、教諭のいじめや体罰はなかったと判定し、処分を全て取り消した。教諭の冤罪は晴れたのである。

マスコミ、人権派弁護士を取り入れて……

 筆者はこの件についても、著書『でっちあげ』でルポした。

 この児童の母親は、真綿で首を絞めるように教師を追い詰めるタイプで、絶叫マシーンのようなさおりとはその点で異なる。

 だが、担任の交代や辞職を執拗に求める点、抗議のすさまじさに学校側が謝罪すると、すかさずその言質を取って、裁判までもっていくやり方は驚くほど似ている。さらに、マスコミ、人権派弁護士、精神科医を巧みに取り込むところもそっくりである。

 まず新聞社やテレビ局に虚偽の情報を垂れ流す。学校に対しては、「マスコミに知り合いがいるが今は抑えている」「バレー部が(いじめや暴力を)認めるなら新聞社への情報は取り下げる」などと、マスコミへのリークをちらつかせて脅す。

 次に、人権派弁護士を代理人に立てる。被害者や弱者救済に使命感を持つこの手の弁護士は、我が子のいじめを涙ながらに語る“被害者の母”の訴えに弱い。

 福岡の事件の代理人となった大谷辰雄弁護士、裕太君の事件の代理人となった高見澤昭治弁護士とも、頻繁に記者会見を開いて教師を糾弾し、マスコミを味方につけようとした点で似た者同士である。

 さらに二人の母親は、子供に精神科を受診させる。福岡の事件の男児は重篤なPTSD、裕太君の場合は、初診でわずか40分の診察でうつ病と診断された。そして、両者とも自殺の危険性があるとして、カルテや診断書に「希死念慮」の文字が記されたのである。

 ところが福岡の事件では、後に男児が入院した精神科の閉鎖病棟で、PTSDの症状は全く現れなかった。裕太君の事件でもやはり、後の裁判で診断に強い疑問が呈されたのである。

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