「糖質制限」桐山秀樹さんの死 パートナーが語る「糖質制限と死は関係がない」

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生前の桐山さんは、とにかく糖尿病に苦しんでいる人を救いたい一心だった

 世に「長寿村」と呼ばれる地域はいくつもあるが、炭水化物オフを実践しているところを耳にしたことはない。また、タンパク質、脂質と並ぶ三大栄養素のひとつである糖質を完全に抜いてもなお健康だと言われて、なかなか素直に首を縦に振ることはできないであろう。

 2月6日に心不全のため急逝した桐山秀樹さん(享年62)は、「糖質制限ダイエット」の第一人者として知られており、三食すべて炭水化物を採らない「スーパー制限」を続けていた。生前の桐山さんは数多の批判やデータを知った上で、それでもあえて「糖質制限」を行っていたはず。

 そのダイエットを支えたパートナーで文芸評論家の吉村祐美さんに、“死の原因”を尋ねるとこう述べる。

「お医者様に聞くと、桐山が倒れた心不全は、気温の変化が激しい時期や、ストレスが強くかかっている時など、誰にでも、30代の若さでも起こるようなものでしょうと言っていました。桐山はこれまで、月に一回は血液検査を受け、数値に異常はなく、健康そのものという感じでしたのよ。ですから、糖質制限と今回の件は無関係だと思います。糖質制限で亡くなったなんて言ったら、それこそ桐山が一番悲しむでしょうね」

 吉村さんによれば、生前の桐山さんは、とにかく糖尿病に苦しんでいる人を救いたい一心だったという。

「自分が糖尿病に苦しみ、糖質制限ダイエットによって克服した。その体験を生かしたくて本をたくさん書いてきましたし、糖尿病患者さんたちの集会を開いたり、講演を行ったりして、糖質制限を推進してまいりました。亡くなってから毎日、いろいろな方々からお電話をいただきます。皆さん“お世話になりました”と涙ながらに思い出を語ってくださる。きっと面倒見が良かったのでしょう」

■“健康”への教訓

 桐山さんのダイエット手法の是非については、議論が分かれるところ。

「そもそも、ダイエットで体重が減っただけで健康と判断することが間違っているのです。血圧が下ったら、コレステロールが下ったらというのも同じ。木を見て森を見ずではないけれど、身体全体の健康のバランスが保たれていることが重要なのです」(心筋梗塞、脳梗塞などの予防に詳しい「真島消化器クリニック」の真島康雄院長)

「健康とは、肉体だけではなく、精神的、社会的にも質の高い生活を営むこと。日本人にとって、長らく米は主食で、様々な文化も生んできた。その視点に立てば、過度な糖質制限ダイエットは肉体だけではなく、精神的、社会的健康にとっても障害になることがあります」(医師でジャーナリストの森田豊氏)

 という声もあるけれど、その旺盛な活動により、桐山さんが我々に様々な議論の種を提示してくれたのは紛れもない事実。そして突然の死をもってなお、健康の本質について、大きな教訓を遺していったのである。

「特集 糖質制限ダイエットに成功して急逝した『桐山秀樹さん』の教訓」より

週刊新潮 2016年2月25日号掲載

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