通算170本塁打の「T-岡田」がFAで移籍へ “再生工場”として挙げられる3つの球団

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 秋の訪れとともに、プロ野球ではベテラン選手の引退や退団の話題が多く聞かれる時期となった。現役続行を希望して、特に注目を集めているのは松坂大輔(中日)と鳥谷敬(阪神)だが、それ以外にも気になるニュースが飛び込んできた。T-岡田(オリックス)がFA権を行使して他球団への移籍を検討していると発言したのだ。

 T-岡田は2005年の高校生ドラフト1巡目でオリックスに入団。プロ入り5年目の10年には33本塁打でホームラン王のタイトルを獲得し、通算170本塁打を記録しているチームを代表する強打者だ。しかし今年はシーズンの大半を二軍で過ごし、ここまでわずか6安打、1本塁打と一軍に定着して以降で最低の成績となっている。オフには、ベテラン選手としては異例といえるプエルトリコのウインターリーグへ派遣されることが発表されたが、出場機会を求めてFA宣言することは十分に考えられるだろう。

 もう一人去就が注目されているベテランが大引啓次(ヤクルト)だ。球団に引退を打診されたが、他球団での現役続行を希望して退団すると伝えられた。大引は浪速高時代から評判の内野手で、法政大では東京六大学歴代4位となる121安打を放ち、06年の大学生・社会人ドラフト3巡目でオリックスに入団。1年目からレギュラーの座をつかむと、その後大型トレードで日本ハムに移籍し、14年オフにFAでヤクルト入り。その後も手堅いショートの守備と勝負強いバッティングで活躍していたが、今年はここまで24安打とキャリア最低の数字に終わっている。

 そこでT-岡田、大引の両選手を獲得するならば、どの球団がマッチするか、各チームの戦力状況を見ながら検討してみたい。

 まずT-岡田だが、真っ先に検討したいのが貧打に苦しんでいる阪神だ。ここまでチーム最多本塁打は大山悠輔の13本で、期待されたマルテも打率は低くないが、中軸としては12本塁打、49打点と、かなり物足りない数字に終わっている。福留孝介、糸井嘉男の大ベテランに加えて、T-岡田も獲得するとなれば、チームの若返りが遅れるという懸念はあるが、中堅、若手に長打が期待できる選手がほとんどいないチーム事情を考えると、獲得を検討する余地は十分にある。好不調の波が激しいT-岡田にとって、熱烈な虎党のプレッシャーは酷という声もありそうだが、今の状態であれば過剰な期待もなくプレーできるのではないか。さらに、慣れ親しんだ関西で、生活の拠点を変えずに済むというのも本人にとってプラスになるだろう。

 条件付きで阪神以外に挙げたいのがヤクルトとDeNAだ。ヤクルトはバレンティン、DeNAは筒香嘉智がオフに退団した時の“穴埋め”として検討したい。特におすすめしたいのがヤクルトだ。バレンティン以外の外野手も青木宣親、雄平とベテランが揃い、1年を通じての活躍は難しくなっている。また、今シーズンはファーストを守ることが多かった村上宗隆も、今後のことを考えればサードに固定したい。そうなると、T-岡田の長打力を生かせるポジションは十分にあると考えられる。ヤクルトは、野村克也監督時代から「再生工場」と呼ばれ、“外様”の選手が馴染みやすいチームカラーもT-岡田にとってプラスになりそうだ。

 一方の大引だが、ショートに不安があるチームとなると楽天が挙げられる。レギュラーは茂木栄五郎が務めているが、大学まではサードが本職であり、守備にはもうひとつ信頼感がない状況が続いている。内野のバックアップ要員としては大ベテランの渡辺直人がいるものの、今シーズンの成績と故障を考えるとオフにユニフォームを脱ぐ可能性が高い。経験豊富なベテランとして大引が働ける枠はまだまだありそうだ。

 もう1球団考えられるのは、T-岡田のところでも触れた阪神だ。ショートは木浪聖也と北條史也が守ることが多かったが、現時点では盤石なレギュラーとは言い難い。野手の構成を見ても全体的に左打者が多く、バランスを欠いている状況だ。T-岡田と大引の両方を獲得するとなれば、さすがにベテラン偏重になるのでおすすめはしない。ただ、T-岡田がオリックスに残留となった場合は大引獲得を検討しても面白いだろう。

 T-岡田、大引の二人はともに今シーズン通算1000本安打を達成したという点も共通している。ともに力が衰えているというよりも、チーム事情で出場機会が減っているという印象であり、役割を与えれば、まだまだ活躍できる可能性は十分にあるだろう。“中年の星”として、鮮やかに復活する姿を期待したい。

※成績は9月18日試合終了時点

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月22日掲載

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