幼児虐待と少年犯罪の因果関係、「三鷹ストーカー殺人事件」の犯人が育った劣悪な環境

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脳が委縮する

「虐待を受けた少年とそうでない少年の脳を比べてみると、虐待を受けた少年は、海馬や扁桃体などが委縮しています。脳の成長が遅れているのです。扁桃体は、感情をつかさどる脳の器官で、正常に機能しないと考え方がネガティブになり、うつ病や自殺願望が生じる率が高いと言われています。そのため子供への虐待は、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、学習障害に次ぐ第4の発達障害とも言われています」

 虐待によって、脳の異常はひとつだけでなく複合的に生じるケースがあるという。そのため、低身長、栄養発達障害、痛みにたいする無反応、暴力、虚言傾向、器物破損、摂食障害、不安障害、解離性障害(ヒステリー)など、影響は多岐にわたる。

「一般の赤ん坊は、親の愛情を受け、保護してもらいながら成長します。赤ん坊が最初に知るのは、お腹がすいて泣けばお乳をもらえ、笑えば笑い返してくれるということです。1歳の幼児になると、親以外へもコミュニケーションが広がっていって、信頼関係、愛情、共感性を身に着けるようになります。ところが、親から虐待を受けたり育児放棄されたりして親との関係を結べないと、子供は自己形成ができず、物心つく年齢になっても他人と適切に接することができなくなります。その結果、人を信頼しない、衝動や欲求を自制できなくなり、社会に適応できなくなる。学校でいじめられて、自己否定感が膨らんでいくのです」

 川崎中1男子生徒殺害事件では、主犯の少年Aは当初、上村君を暴行するだけのつもりだったが、

「CがカッターナイフをAに渡したことで事態が急変。Aら3人は衝動を抑えることができず、43回も切りつけたのです」

 これまで非行少年を数百人インタビューしてきたという石井氏。非行少年の更生については、こう語る。

「虐待を受けて非行に走った少年たちは、その生活パターンが決まっています。親から虐待を受けて育った子供は、小学生になっていじめにあい、ひきこもる。中学1年で家を出る。中学2、3年で不良グループに入り、ドラッグ、SEX、売春、暴行、窃盗などを覚え、15、6歳で逮捕される。彼らを救うには、まずは虐待にあっている幼少期、学校でいじめを受け不登校になった時、中1で家を出た時、この3つの時期に保護すれば更生するチャンスがあります」

 もちろん、虐待を受けても非行に走らない少年もいる。とはいえ、

「彼らが親になって子供をもうけた時、その子を虐待する可能性が出てきます。虐待連鎖を止めるためにも、被虐待児からのメッセージを真摯に受け止めるべきですね」

週刊新潮WEB取材班

2019年6月1日掲載

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