Fランクでも就職率95% “バカにされたい”デジタルハリウッド大学

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〈都の西北、ワセダのとなり〜♪〉と、バカボンのパパが歌う「バカ田大学」。もちろん、赤塚不二夫のギャグマンガに登場する架空の学校だが、遂に現実世界で「バカ」を名乗る大学が現れたという。シェー!

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 秋のオープンキャンパスシーズンともなれば、各大学は卒業生の進路をアピールして、受験生集めに躍起となる。が、約95%という高い就職率を誇りながらも、「バカにされたい大学」と自ら称するのが、東京・御茶ノ水に本部を置く「デジタルハリウッド大学」だ。

 9月23日付の「朝日新聞」朝刊に掲載された全面広告(写真)では、学長の杉山知之氏ご本人が登場して、〈(開学以来)およそ11年間、私は、そしてデジタルハリウッド大学は、たくさんの場面でバカにされ続けてきました〉なんて告白に始まり〈バカにされ続けたい。バカにされるようなことを続けていきたい〉と終始、自虐気味に“建学の理念”を世間に対して語ったのだった。

バカにされる在校生は約1000名(朝日新聞全面広告より)

 大手予備校講師の解説。

「文科省認可のレッキとした4年制大学ですが、1学部1学科でCG映像やゲーム、アニメなど、オタク文化に興味を持つ学生の教育に特化しています。難易度は予備校の全国模試で常に偏差値35未満を指すFランク。受験者数が少なくて合格者の平均が出せないため、偏差値測定が困難なのです」

 その奇抜な校名と相俟って、受験生やその保護者から奇異の目で見られてきたという。先の講師によれば、

「入試はAO方式の面接が主ですが、一般入試で学科を受ける代わりにセンター試験からの出願も可能で、全科目のうち得点のよかった2科目を選び申請できる。社会が得意なら日本史と地理のみで受験できます」

 要は入学者の学力を重視しない方針のようだが、それでも、卒業生の多くが就職に成功するのはなぜか。

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■電通にヤフー

アキバに程近いキャンパス

 開学以来、主にアニメ史を講義してきたデジタルハリウッド大学名誉教授で作家の辻真先氏が言う。

「大半の学生は、ここなら一般大学と違う勉強ができると目標を持ち進学している。偏差値が低いFランクのことを気にする子はほぼいません。講師も3Dの会社や著名なアニメ制作会社、プロダクション等から派遣され卒業制作の指導を行う。学生も自分を売り込む機会が多く、企業にとっても使える人材をリクルートできる場になっているんです」

 大学のホームページを覗けば、就職先には電通やヤフー、エイベックスなどクリエイティブ企業が名を連ねる。好きなことを仕事にできて試験はカンタン、就活も楽チンと夢のような大学なのだが、「大学ジャーナル」編集委員で教育ジャーナリストの後藤健夫氏は、

「少子化で大学全入時代となり、かつて専門学校を選んだ高校生が大学へ進学する傾向が強まった。この大学が、そういう子たちの受け皿となった背景もある」

 と、現状を分析した上でこんな懸念を口にするのだ。

「雇う側もその辺りはシビアに見ていますから、卒業生の就職率が良くても果たして彼らは大卒として扱われているのか。給料を含めた待遇は一般大卒と同じか。こういったことは、10年、20年後に彼らが会社の中で、どんな仕事をしているかで初めて評価できるのでは」

 よろめく明日を乗り越え希望の職にありつけても、素直に“これでいいのだ”とは言えないのである。

週刊新潮 2016年10月6日号掲載

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