ツケ回収のため客に「1都5県」出稼ぎ売春させた元ホストが逮捕 システム化する“風俗堕ち”の手口とは

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 店の“ツケ”を回収するため客の女性を性風俗店で働かせたとして、元ホストの秋葉拓也容疑者(27)が売春防止法違反の疑いで逮捕された。女性は2021年10月から翌3月までのわずか5カ月の間に、都内や福島、愛媛、熊本、大分、沖縄で売春を強いられ、売上金を渡していたという。一介のホストがなぜ、ここまでの絵を描けたのか。『売る男、買う女』(新潮社)などの著書があるノンフィクション作家の酒井あゆみ氏が解説する。

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「早く金作ってこい」

「(性風俗店で働くのを)断るならもっときつい仕事をさせるぞ」

 秋葉容疑者は、こんな言葉で女性を従わせ出稼ぎさせたという。

“ナンバーワンになるために売り上げを上げたかった”という動機が報じられている秋葉容疑者。彼は歌舞伎町の区役所通りのバッティングセンターにほど近いビルの上階にあるホストクラブで、一美希(にのまえみき)の源氏名で働いていた。店では「主任」だったようで、本人のアカウントはすでに削除されているものの、SNS上には「年間売上 No.2 一美希主任」との投稿が残っている。

 歌舞伎町に詳しい関係者からは「路上でお客と思しき女性を蹴っている秋葉容疑者を見た」という目撃談も入ってきた。この真偽は不確かながら、秋葉容疑者の働いていたホストクラブは、数年前まで歌舞伎町の最大勢力になるのではとも噂されていた勢いのあるグループの店で、いまも新宿界隈で〈年間億ホスト〉と謳う派手な宣伝トラックを走らせている。だから客を手荒に扱う“オラオラ営業”をしていても不思議はないし、報じられているツケが「約1000万円」と巨額なのもうなずける。

 この事件について歌舞伎町のホスト界隈は「あれは見せしめ逮捕だ」と怯えている。それほどまでに、いま、「ホストクラブでツケを作らせる→性風俗店で働かせて回収する」というシステムが出来上がってしまっているのだ。

昔とは違う「店に送り込む」システム

 昔から、ホストに入れ込んだ客がカネ欲しさに性風俗店で稼ぐというパターンはよくあった。だが誤解を恐れずに言えば、以前は女性が自主的に性風俗店勤務を選びホストに貢いだわけである。ところが秋葉容疑者のケースでは、半年もしない間に、1都5県の店舗で出稼ぎしている。女性ひとりが自ら動いて働いたにしては、あまりに効率が良すぎると思わないだろうか。

 ポイントは、秋葉容疑者と共に、各県の性風俗店の関係者、そしてスカウトの宇田川直人容疑者(27)も逮捕されているという点だ。

 スカウトという仕事は、路上で女性に声をかけ、自分とつながりのある夜の仕事先を紹介するというイメージが強いかもしれない。だが実際はそこで終わりではなく、紹介先で女性が稼いだ店の売り上げの数パーセントをマージンの形でスカウトが受け取る。女性が仕事を辞めたいと言い出したら、なんとか思いとどまるよう説得するなどの「ケア」も、スカウトの仕事なのだ(詳細は別記事「ヤクザと大乱闘で注目、歌舞伎町の『スカウト』というお仕事 実態は“不動産屋”?」参照)。

 近年このスカウトとホストとのつながりが密接になっている。さるスカウトマンは次のように解説する。

「今のスカウトは路上ではなく、SNSで夜の仕事を探している女の子を見つけて声をかけ、自分とつながりのある夜の仕事に紹介するやり方が主流です。店側としても、飛び込みの女性を直に雇うより、後の女性の面倒も見てくれる僕らを介したほうが楽だと分かっていますからね。これとは別に、知り合いのホストから『自分の客で稼ぎたいって子がいるんだけど』と女性を紹介され仕事を紹介することもある。秋葉容疑者はまさにこのケースだったんじゃないかな」

 加えていえば、コロナ禍以降、パパ活の浸透も手伝って稼げなくなった都市部の女性が、地方の店に勤務することも珍しくなくなった。スカウトも地方案件を多く抱えるようになったことで、今回のような、地方を転々とさせる働かせ方ができるようになったのだろう。

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