朴槿恵の慰安婦像撤去に立ちはだかる「反日無罪団体」の壁

国際 韓国・北朝鮮

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 なだれこむ学生、怒号、唐辛子スプレー……。昨年末の日韓合意で決まった、慰安婦の支援団体「和解・癒やし財団」は混乱のうちに発足したが、肝心なのは、ソウルの日本大使館前にある慰安婦像の撤去がきちんと実行されるか否かである。しかし、朴槿恵大統領(64)の前には、独自の行動原理を持つ「反日無罪団体」の壁が立ちはだかる。

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「不可逆的解決」は果たされるのか

「財団設立を中止しろ!」

「少女像を守れ!」

 7月28日、ソウル市内で行われた「和解・癒やし財団」理事長の記者会見場に乱入した20人ほどの学生らは、口々にそう叫びながら、30分にわたって演壇を占拠。会見後、理事長は男からカプサイシン(唐辛子の辛み成分)入りのスプレーを顔面に浴びせかけられ、救急搬送された。

「日本人の目にはあのシーンは異様に映るでしょうが、韓国では珍しいことではない。日常の光景です」(ソウル特派員)

 財団発足を受け、日本政府は8月中にも日韓合意に基づいて10億円を拠出する方針で、韓国側には大使館前の慰安婦像の撤去を求めていくという。が、あのような異様な光景を見せ付けられると、不安になるではないか。本当に慰安婦像撤去は可能なのか、と。

「朴槿恵大統領は慰安婦像撤去のための努力もしないだろう、という見方もあるようですが、それは間違い。彼女は、2018年2月の任期切れまでの間に何とか慰安婦像を撤去したいと考えている。大統領になって以降、内外で業績がほとんどない彼女にとって、日韓合意は唯一の成果。日本との約束を反故にして、その業績に傷がつく事態は避けたいのです」(同)

■アンタッチャブル

 2011年に問題の慰安婦像を設置したのは、市民団体「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)。昨年末の日韓合意自体に強く反発しているこの団体は、

「韓国社会ではアンタッチャブルな存在で、メディアからも怖がられている。反日無罪、愛国無罪という言葉が韓国にはありますが、慰安婦問題などの案件では何をやっても許され、咎められることがない、という状況なのです」(韓国事情に詳しいジャーナリスト)

 挺対協などはここへきて気になる動きも見せている。

「ソウル市が所有する、かつて日韓併合条約が結ばれた韓国統監官邸跡地に、慰安婦を追悼する公園を作ろうとしているのです」

 と、元朝日新聞ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏は言う。

「公園には元慰安婦の女性が描いた壁画を展示し、来園者が慰安婦について学べる場所にするそうで、日本の朝鮮半島統治からの解放日である8月15日にオープンする予定になっています。公園が完成すれば挺対協の活動を盛り上げる一助となるでしょうし、反日の機運が高まることは言うまでもありません」

 そうした「雰囲気」の中で慰安婦像撤去を実行するのは容易なことではないが、だからといって、

「必要以上に“反日無罪団体”の反発を恐れて撤去を決断しないとなると、朴槿恵大統領は、実行力が欠如した最低の大統領として歴史に名を刻むことになります」(先のソウル特派員)

 売国奴と言われても、後の歴史が私を判断する――日韓国交正常化を果たした朴正煕大統領(当時)の言葉だが、娘の朴槿恵大統領に同様の覚悟はあるか。

「ワイド特集 鉄の女の『金』『銀』『銅』」より

週刊新潮 2016年8月11・18日夏季特大号掲載

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