デイリー新潮

社会

服についた煙草の煙が害という“三次喫煙”の真実 「健康への影響の可能性は低い」と専門家

現在発売中

週刊新潮 2017年3月30日号 
2017/3/23発売

ネット書店で購入する

「三次喫煙」なるものの害とは(画像はイメージです)

 最近の禁煙運動家たちの多くは、「三次喫煙」なるものの害を主張している。

 この言葉は、09年に米国で生み出された造語と言われていて、本人による喫煙が一次喫煙、いわゆる副流煙を吸うのが二次喫煙、それに続く新たな「煙草被害」を意味する。喫煙者の衣服などに付着した煙草の煙は喫煙者とともに「移動」して家庭内にも持ち込まれ、そこで煙に含まれる煙草関連物質が揮発し、それを吸った人に三次的な害を与えるというのである。

 なんだか、福島第一原発事故後に起きた、「福島県ナンバーの車には近寄るな。放射能が伝染(うつ)るぞ」との差別に近い気がしてならないが、テレビの情報番組でも取り上げられるなど、近年、三次喫煙という言葉は大手を振って歩いているのである。医学博士で「NPO法人 日本タバコフリー学会」顧問の宮本順伯(じゅんはく)氏も、

「だから、室内全面禁煙にしないと三次喫煙は防げないのです」

 と、強調する。

 しかし、である。

 これでは、まるで喫煙者のばい菌扱いではないかという倫理的疑念が頭をもたげる上に、科学的にも疑問符が付けられているのだ。

「国立がん研究センターの調査では、受動喫煙、すなわち二次喫煙による発癌リスクですら1・02~1・03倍です。三次喫煙ともなれば、発癌リスクはほとんど1、つまりそれによるリスクはないに等しいと言えます」(ある研究者)

■否定する論文も

 静岡県立大学の松下秀鶴名誉教授(環境衛生学)が後を受ける。

「服に付いた煙の臭いを嫌う感情論は理解できます。しかし、煙草の煙の濃度は、煙が出た瞬間に気体として拡散され、20分の1程度に薄まり、数時間おけば数万分の一に希釈されます。にも拘(かかわ)らず、髪などに付着した煙によって第三者の健康に害が生じるとは考えにくい。少なくとも三次喫煙が肉体に与える影響についての確固とした疫学調査結果を、私は寡聞にして知りません」

 産業医科大学の秋山幸雄准教授(安全衛生マネジメント学)が続ける。

「三次喫煙の害を訴える方は、服や壁に付着した煙草に含まれる有害物質が空気中の別の物質と化学反応を起こし、新たな有害物質を生み出すと言いますが、それを否定する実験結果を示す論文が存在します。しかし、こうした論文はどういうわけかほとんど報じられません。ちなみに、肉を焼いた際にもその煙からはタールが出ますが、焼肉屋の壁やテーブルを触って健康被害が出たとの話は聞いたことがありませんよね」

 さらに、粒子に詳しい東京農工大学の畠山史郎教授曰く、

「煙草の煙に含まれる物質は非常に小さな粒子です。これが衣服に付着した場合、粒子の力が弱いため、衣服内に『留め置かれる』力が強く働き、再び衣服の外に出ていくことは考えにくい。したがって、三次喫煙が健康に影響を及ぼす可能性は低いと思います」

 最後に、漫画家の黒鉄ヒロシ氏が、「愛煙家としての個人的な見解」とした上で現下の世相を斬る。

「三次喫煙なるものを囃(はや)し立てる行為は、犬や猫の毛がカーペットに付いた結果、アレルギーが引き起こされる可能性があるので犬や猫を飼うのは禁止と言っているのと同じ暴論に思えます。もし本当に三次喫煙による害があるのだとすれば、そのうち煙草1本吸っただけで殺人罪に問われかねませんね」

「特集 世界禁煙デー! 路線対立が激化してきた『禁煙運動』先鋭化の果て」より

  • 週刊新潮
  • 2016年6月9日号 掲載
  • ※この記事の内容は掲載当時のものです

この記事の関連記事