自殺を考えている人にどんな言葉をかければいいか 自殺志願者に「生かし屋」がかけた言葉

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 何らかの事情で自殺を考えている人に対して、どんな言葉をかければいいのか。死んでも何にもならない、と口で言うのは簡単ですが、思いつめている人にどこまで通じるのかはわかりません。

 現在、投資ファンドの最高顧問を務めている並木秀之さん(61)は、過去、数多く、そういう人に接してきました。債権整理に関わる仕事をしていた時期に、

「巨額の借金で首が回らない。もう死ぬしかない」

 と言う人たちの相手をする機会が多くあったからです。

 そんな時、並木さんは、着ているシャツをたくし上げて、こう言ったそうです。

「こんな体でも生きているんだから、あんただって生きてみろよ!」

 並木さんは、生まれた時から脊髄分裂症という重い障害を抱えていました。大小便がままならない状態だったので、中学生のときに膀胱にカテーテルを入れるという手術を受けます。この管から尿を出すようにしたのです。そのため、彼のおなかからは常に管が飛び出ている状態でした。

 並木さんは、自殺を口にしている人に対して、最初は口を使って説得を試みます。しかし、それでも効果がないときに、お腹を見せて、「こんな体でも~」という台詞をぶつけます。すると、相手はギョッとして、

「本当に、管が腹から出てるのか? 嘘じゃないだろうな?」

 疑いながら、ジロジロ眺め出します。その機を捉えて、再度、説得をすると、相手も今度は話に耳を傾け始めるのです。

 こうして思いとどまった人が多くいたことから、当時、並木さんは「殺し屋ならぬ“生かし屋”だ」と言われていたそうです。

 彼の半生を綴った著書『死ぬな 生きていれば何とかなる』には、こんなメッセージが書かれています。

「体がノーを発するまでは、生き続ける。ただそのことだけで、人生は変わるのだという事実を、私はもっと多くの人に知ってほしいと思っています。消えない悲しみを抱えたり、『死にたい』と思うほど絶望的な状況に置かれても、『ただ生きている』だけで、人生には次々何かが起きてくるものです」

 実は並木さんは、生まれつきの障害の他に、膀胱がんや白血病など5つのがんも経験しています。それでも何とか切り抜け、現在は自ら創設したファンドを運営し、恵まれない子供たちへの支援も行っています。

 壮絶な人生を経たうえでの「死ぬな」という言葉には重みがあります。

デイリー新潮編集部

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