人命よりクジラ命…「反捕鯨原理主義」が招いたサメ被害の皮肉

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遭遇確率の上昇

 日本鯨類研究所の大隈清治名誉顧問に聞くと、

「サメは生きたクジラを襲うことはありませんが、確かに死骸は食べる。クジラが増えれば、自動的にその死骸も増えますから、サメにとっては食料が豊富に得られることになります。すると、サメの個体数が増加し、当然、人間との遭遇確率は上昇する。その結果、サメによる人的被害が多くなってきているのです」

 しかも、オーストラリアではクジラだけでなく、ホオジロザメを含むすべてのサメも保護対象なのである。

 元水産庁漁場資源課長で、東京財団上席研究員の小松正之氏が解説する。

「科学的見地からは、反捕鯨に理屈は見つかりません。クジラが絶滅するようなことはなくなったからです。なのに、オーストラリアが反捕鯨を唱えるのは、1つは国益のため。畜産大国なので、クジラよりも牛や豚などが食卓に並ぶ方が国が儲かるからです。だから、エコテロリストと言われるシー・シェパードをバックアップする姿勢を崩していないのです」

 もう1つは、国民ウケするからだという。

「オーストラリアには、未だに白人国家だった名残があります。そのため、クジラやサメを食するような東洋的で異質な文化を叩けば、政治家は国民の支持を得やすい。挙げ句、クジラやサメよりも、人命が軽んじられるということになってしまったわけです」(同)

 本末転倒としか、言いようがないのである。

週刊新潮 2017年8月31日秋風月増大号掲載

ワイド特集「夢追い人が夏を追う」より

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