安倍・プーチン会談、“北方領土”は前進せず トランプ当選の影響

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 また遠のいてしまった。11月19日、ペルーの首都・リマで日露首脳会談が開かれた。12月のプーチン大統領訪日を目前に控えての会談とあって、北方領土返還に向けた前進があるのではと注目が集まったが――。

 官邸担当記者の話。

「会談終了後、会見場に現れた総理の表情はいつになく険しく、成果が何もなかったことは明らかでした。案の定、手応えを訊ねられても『良い話し合いができたと思う』とお茶を濁し、肝心の平和条約締結に関しては『大きな一歩を進めることはそう簡単ではない』と、半ば交渉を諦めたかのような言い方。これまで見せてきた強気な姿勢は一切見られませんでしたね」

手応えはゼロに逆戻り

 さる外交ジャーナリストは“後退”の理由を、

「間違いなくトランプが次期大統領に選ばれたせい」

 と分析する。

「G7によるロシアへの経済制裁が続く中、プーチンは議長国である日本との経済協力を12月に確立し、1月末に期限が迫るEUの制裁期間延長を止める交渉材料にしようとしていたのです。ところが、ロシアに好意的な発言を繰り返すトランプ氏の当選が決まった瞬間、アメリカからの制裁が解かれる道筋がついた。これ以上日本に気を遣い、領土問題解決を匂わせる必要がなくなったのです」

 とはいえ12月の公式首脳会談では、一定の成果を出さねばなるまい。

 新潟県立大学の袴田茂樹教授の解説。

「経済協力は合意した上で、『平和条約締結に向けてロードマップを策定する』という、玉虫色の声明が発表されるのが関の山でしょう。私はこれまでロシア大統領府の要人と何人も話しましたが、ロシアが平和条約締結のために領土問題で譲歩するという話をしている人はひとりとしておらず、そんな論調のメディアもない。今回の会談も現地では専ら、『経済協力のための話し合い』という報じ方ばかりです。官邸もメディアもこれでようやく現実を知ったのでは」

 総理は郷里・山口でどう巻き返すか。

週刊新潮 2016年12月1日号掲載

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